やんちゃ軍団をやる気にさせた高松商・長尾監督の対話術 (4ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 岡沢克郎●写真 photo by Okazawa Katsuro

 大熊のように変わり始めた選手がいる一方で、下級生の中には、変われない選手もいる。いまだに学校内で他の先生から厳しい言葉を浴びせられる部員がいるのも事実だ。だが、“やんちゃ軍団”の牙を折らないスタイルが、伝統校らしくない爆発力ある攻撃に結びついているのは間違いない。長尾監督は言う。

「この子たちは中学校のとき、学校生活で先生に反抗したりして、『高校に行ってもお前らみたいなヤツはダメじゃ』と言われてたんですよね。でも、それは教師がそうやって決めつけているところがあって、じつは違うという思いがあるんです。この子たちの考えを最初からペケ(×)にするんじゃなくて、ペケになってもいいから考えて自分でやってみろと。『お前のええところを前面に出せよ』という方がこの子たちに合っているかなと感じてます。だからガミガミ叱りすぎるのはよくない。ただ、叱るのは大事なので、そこは部長にお任せして、僕は『よく考えてやれ。負けたら責任取るから』ぐらいの気持ちですね。その方が、アイツらは自由にやるんだろうな、のびのびやるんだろうなと。高校野球とはちょっと違う。指導者からしてみたら、邪道的な指導なのかもしれないですけど」

 そんな指導の成果が出たのが、決勝の智弁学園戦の10回表。無死から安打で出た安西が、2番・荒内俊輔の2球目に盗塁を決めた場面だ。安西は言う。

「見ていた人は送りバントだと思ったと思います。相手も『絶対バントだ』と思っているというのがあった。その裏をかいて盗塁できました。ノーサインです」

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