【高校野球】スピードを捨てた150キロ右腕、大阪桐蔭・藤浪晋太郎の「進化」 (3ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 岡沢克郎●写真 photo by Okazawa Katsuro

 まずは投球フォーム。準決勝で対戦した明徳義塾の馬淵史郎監督は6月に行なった練習試合との違いをこう分析した。

「前は(右腕が)背中側に入りすぎて引っ掛かっていたが、それがなくなった。フォームにゆったりさが出てきたよね」

 田村も同じ感想だ。

「フォームに力が抜けていて、ボールも手元で伸びるようになっていた。春よりも格段によくなっていると思います」

 藤浪自身は、こう説明する。

「前はタメを作ろうとしすぎて、左肩が入りすぎていた。余計な動作を削ってきたつもりです」

 ゆったり投げられるようになったことで、体重移動も腕の振りもスムーズになり、変化球の精度も増した。特にセットポジションでは、ストレートが力んで抜けても、スライダーで立て直すことができた。

「力んでしまうと抜ける。そこを修正してきたつもりです。春に比べて、変化球でカウントが取れるようになったと思います」

 スライダーに加え、フォークやチェンジアップも使えるようになった。変化球に自信を持てたことが、決勝での配球を可能にした。そして、藤浪の持ち味であるスピード。最速はセンバツと同じ153キロだったが、明らかに質が変わっていた。甲子園練習の時、藤浪はこんな言葉を口にしている。

「甲子園は(スピード)ガンが出やすい。150キロぐらいは出ると思うので球速より球質を意識したい。伸びとキレを重視しています」

 その意識もまた、ゆったり力まずに投げられた要因だった。だからこそ、リリースの瞬間に100%の力を発揮することができる。つまり、スピンの効いた、質のいいストレートを可能にしたのだ。9回の第4打席で内角のストレートを意地でセンター前に運んだ田村が、取材を終え、引き上げる時にこんなことを言っていた。

「まだ左手が痛いっす」

 閉会式も終わり、両チームの記念撮影も済んだ後の取材の時間。9回表の打席からすでに1時間以上は経過している。それでも、顔をしかめていたのだ。田村の手に残る痛み。これこそ、藤浪の進化の証だった。

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