【高校野球】スピードを捨てた150キロ右腕、
大阪桐蔭・藤浪晋太郎の「進化」

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 岡沢克郎●写真 photo by Okazawa Katsuro

大阪桐蔭が光星学院を3-0で下し、史上7校目の春夏連覇を達成した大阪桐蔭が光星学院を3-0で下し、史上7校目の春夏連覇を達成した どちらが、進化しているか――。春から夏にかけてのお互いの成長度合いを示す場として、野球の神様が用意した最高の舞台。それが史上初となる春夏連続同じ顔合わせとなった大阪桐蔭と光星学院の決勝戦だった。

 大阪桐蔭のエース・藤浪晋太郎と光星学院のスラッガー・田村龍弘、北條史也。センバツは7-3で大阪桐蔭が勝利したが、田村が二塁打1本を含む3安打、北條が二塁打2本。個々の対決では光星学院のふたりに軍配が上がった。

 あれから4カ月半を経ての再戦。

 この夏、もっとも成長した姿を見せたのは北條だった。初戦の遊学館戦、自身4度目の甲子園で初本塁打を放つと、続く神村学園戦でも2試合連続となる一発。準々決勝では桐光学園・松井裕樹から2点タイムリーを放ち、準決勝の東海大甲府戦ではバックスクリーンへ2打席連続で放り込んだ。

「(変化球でタイミングを外された)東海大甲府戦の1本目はセンターフライだと思いました。2本目はバットの先。あそこまで飛ぶとは思いませんでした」

 本人もびっくりのパワーは、センバツ後、毎日の腕立て伏せと倒立で体幹を鍛えてきた成果。だが、それ以上に北條の自信となっていたのが、新しい打撃フォームだった。センバツまでの北條は、始動と同時に左ひじと左ひざをぶつけるようにして"割り"を作ってトップに入っていた。センバツでもフェンス直撃を3本打つなど結果を残したが、本人は納得していなかった。

「あの打ち方だとクイックの時とかに遅れるんです。このままではダメだと思ったので、変えようと思いました」

 基本的な動作は同じだが、動きを小さくした。それまでは10動いていたのを、無駄な動作を削いで7ぐらいにした感じだ。コンパクトになったことで、素早くトップを作ることができ、速い球に対応することができる。4月から試行錯誤を重ねてきた北條がこの新フォームに手応えを感じたのが、青森県大会前の最後の練習試合となった7月上旬の八戸大学との試合だった。140キロを超えるストレートを投げ込む右腕から本塁打を放ち、「あれで掴みました」と、打倒・藤浪に自信を深めた。

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