谷繁元信が太鼓判。金足農・吉田が「プロでも十分に通用する」根拠 (2ページ目)
――甲子園での最速は150キロでしたが、これからもっと速くなりそうですね。
谷繁 彼はきっと、ストライクゾーンで勝負できるピッチャーになると思います。もちろん、今後の環境や練習方法にもよりますが、遠回りせずにいい指導者についてもらいたいです。
――6試合で881を投げた体力もそうですが、マウンドさばきや試合中の表情から、彼の気持ちの強さが伝わってきました。
谷繁 僕は直接彼と話をしたわけではありませんが、さまざまなエピソードを聞く限り、相当メンタルも強そうですね。「今の時代にこんな高校生がいるのか。エースらしいピッチャーがいるな」と思いました。金足農業に入ろうと中学時代の仲間を誘ったんですよね? それで、みんなで甲子園に出て準優勝までしたんですから、「すごい」としか言いようがない。そんな選手、最近の高校生ではいませんよ(笑)。
――昭和の漫画の世界の出来事みたいですよね。
谷繁 本当にそうですよね。「そんな青年がいたんか!」と驚きました。それに、お父さんが彼を一切褒めないというのもいい。厳しさの中で成長してきたんでしょう。反発することもあっただろうけど、こういう父子関係も今の時代では珍しい。
――高校の野球部でも何人ものピッチャーがいる時代に、ひとりでマウンドに上がり続けたところも「昭和」を感じさせました。
谷繁 最近の若いピッチャーは、しんどいことからすぐ逃げる傾向があるように思えます。どこかがちょっと痛いとすぐに交代したり、調子が悪いとマウンドから降りたり。そんななか、彼のピッチャーとしての姿勢は本当にすばらしい。誰もが認める、本当のヒーローですよ。
高校を卒業してから第2章が始まります。これからは「あの金足農業の吉田」と言われ、みんなから注目されるでしょうが、そのプレッシャーに負けないでほしい。伝説を作ったピッチャーは、一生、そういう目で見られますから。
――吉田以外で目についたピッチャーは?
谷繁 2年生のピッチャーがよかったですね。名前を挙げるとしたら、創志学園の西純矢、横浜の及川雅貴、星稜の奥川恭伸。西は体も大きい(184センチ、79キロ)し、スピードもある(甲子園の最速は149キロ)。吉田と同じように下半身、とくに左ひざがうまく使えている。前の足が突っ張るピッチャーが多くて、下をきちんと使って最後まで腕を振れるピッチャーは少ないですよ。
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