谷繁元信が太鼓判。金足農・吉田が「プロでも十分に通用する」根拠 (3ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • 岡沢克郎●写真 photo by Okazawa Katsuro

――それでも、谷繁さんのイチオシは吉田ですか?

谷繁 今年の大会は吉田が目立ちすぎました。とくに大きな課題はありません。あえて言うなら、なるだけ早く体をプロ仕様にすること。「ストレートのスピードを上げる」「キレを出す」「変化球の精度を上げる」といったことを考えて練習していけば、プロでも十分に通用すると思います。似ているピッチャーを挙げるなら、タイプ的には桑田真澄(元巨人)さんでしょうか。もしかしたら、桑田さんよりもスピードが出るかもしれない。

――その吉田は決勝戦の5回にマウンドを降りるまで、881球を投げました。登板過多を心配する声をあがりました。

谷繁 たしかに、高校生にあれだけ投げさせるのはどうかと思います。でも、一生に一回のことですからね。将来のことを考えれば、投球制限のような方法も必要かもしれないけど、"今"を考えれば「投げさせてやりたい」という気持ちもある。なかなか答えが出ない問題ですね。

――谷繁さんがバッテリーを組んだピッチャーには、長く現役を続けた人が多くいます。

谷繁 岩瀬仁紀(中日ドラゴンズ)や山本昌さん(元中日ドラゴンズ)みたいに、40歳を過ぎても投げられるピッチャーは稀です。プロ野球での選手生活は10年を超えれば長いくらい。高校野球で投球回数を制限したら、その選手寿命が何年伸びるのかはわかりません。

 甲子園のような大舞台で、投球制限によって登板機会を奪われたら、そのピッチャーが一生後悔するんじゃないかと思います。プロの立場で言わせてもらうと、肩やヒジを痛めて投げられなくなったら、それまでの野球人生だったということ。やるべき時にやらないと。「精いっぱい頑張って、肩やヒジが壊れたらそれで終わり」でいいんじゃないかとも思います。

 壊す人は壊すし、いくら投げても大丈夫な人もいるんです。何より大事なのは、正しいフォームで投げること。いくら大事に保護しても、60歳まで投げられるわけじゃない。甲子園で投げることなんて二度とないんですから、「投げておけばよかった」と後悔することがないようにしてあげてほしいです。

(取材協力:寺崎江月)

つづく>>

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