投資教育が始まった高校で野球部の生徒が学ぶ「株式が投資で、FXが投機である理由」 (3ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【通貨そのものは何も価値を生み出さない】

奥野「確かに、1ドル=135円の時にドルを買って、1ドル=140円の時にドルを売れば、1ドルにつき5円の利益が出るから、価値を生んだと思ってしまうかもしれないね。

 でも、為替レートって何かというと、異なるふたつの通貨の交換レートにすぎないんだ。たとえばドルという通貨と、円という通貨があって、このふたつの通貨を交換する時に、135円を払えば1ドル受け取れるとか、1ドルを売ると140円受け取れるといっただけの話なんだよ。

 確かに1ドルが135円から140円になると、なんとなく価値を生んだように見えるんだけど、これは通貨の交換比率が変動しているだけで、ドルや円という通貨が、株式のように価値を生み出しているわけではない。

 君たちのお財布に入っているお金があるよね。お財布に入れているだけでは増えないでしょ。1000円をお財布に10年間入れっぱなしにしていても、1000円は1000円だよね。つまりお金、すなわち通貨は何も価値を生み出さないってことなんだ。

 通貨というのは、国が発行している信用の証以外の何ものでもない。では、国は何かの価値創造主体かというと、実は何も生み出していない。だとすると、何のために国は存在するのか。それは調整するためなんだ。

 ちなみに何を調整するのかというと、たとえばお金持ちからお金を持っていない人に、税金や生活保護の形でお金を流す。高齢になって働けなくなった人に対して、現役世代の人たちが働いて納める社会保障費から年金を渡す。こうした所得再分配の調整役を担っているのが国なんだ。

 その、何も価値を生み出していない国の信用を表象したのが通貨であり、その通貨同士の交換比率が為替レートなので、FXのように為替レートの値動きで売買を行ない、利益を得る行為は、投資ではなくて投機ということになるんだ」

由紀「もうひとつ質問です。FXのことを『外貨投資』って言う人がいるんですけど、これってどうなんでしょうか」
鈴木「『外貨投機』って言い直すべき?」

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