投資教育が始まった高校で野球部の生徒が学ぶ「株式が投資で、FXが投機である理由」 (4ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【1ドル=300円にはならない理由】

奥野「『外貨投資』という言葉が定着したのは、円が長期間、トレンドを持って動いてきたからなんだと思う。日本人はいつの間にか、『外貨にも長期投資すれば儲かる』という錯覚を持ってしまったんだ。

 どうしてそんな錯覚を持ってしまったのかというと、戦後のある時期、ずっと1ドル=360円に固定されていた時代から、変動相場制になり、ずっと円高が進んで、1ドル=76円までいってしまったからなんだ。支払いを円でする日本人には意識しにくいことかもしれないけど、この間、円を持っていた海外の投資家は、相当、儲かったんじゃないかな。

 その裏返しなのかもしれないけど、最近の、1ドル=76円から150円までドル高が進んでいく過程において、あたかも株式の長期投資と同じように、ドルを長期間持てば儲かるという錯覚を持つ日本人が増えたのだと思う。『いずれ1ドル=300円だ』なんてね。

 でも、それはないだろうね。そもそも1ドル=360円から76円まで円高が進んだ局面というのは、日本が新興国から先進国の仲間入りを果たすまでのプロセスだった。日本の経済力が見直された結果、円高が進んだんだね。

 先進国の仲間入りをすれば、先進国同士の為替レートはそんなに大きく乖離しない。ドルと円で言うと、1ドル=100円プラスマイナス20円前後というところが妥当な水準と考えていい。つまり1ドル=80~120円だね。

 この間、1ドル=150円まで円安が進んだのは、『このままだと日本は後進国になりますよ』という、市場からの警告だと考えられる。それはそれで大変なことなんだけど、日本にはまだまだ売れるものがたくさんある。観光資源もそうだしね。

 もし、1ドル=200円なんてことが実際に起きたら、日本に海外から大勢の観光客が来るでしょう。その観光客は日本にたくさんドルを落としていく。でも、日本でドルは使えないから、どこかで円に替える。つまり円が買われて、1ドル=200円から150円、120円というように円高に戻っていく。

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