尾崎世界観「人生とプロ野球が重なり合う瞬間がある」。大ファンのヤクルトがピンチを無失点で抑えたら「別れた彼女に連絡してみよう」 (5ページ目)

  • 白鳥純一●文 text by Shiratori Junichi
  • 山口直也●撮影 photo by Yamaguchi Naoya

――コロナ禍などで少なくなりつつありますが、野次や罵声なども「心の荒み」の一種ですね。

「そうですね。子供の頃から当たり前のようにあったからかもしれませんが、野次や罵声を音として捉えると、"歪みのエフェクター"のようだと思います。たしかによくないことではあるけれど、好きな気持ちの裏返しでもあるので。大人がよくない言葉を本気で叫ぶシチュエーションというのは、世の中にはなかなかない。野球場ならではの光景だと思うし、『広い野球場はそんな気持ちも飲み込んでくれるから、すべて許されるんじゃないか』という甘えが、みんなをそうさせているのかもしれません」

――ミュージシャンの皆さんは、野次や罵声を浴びるというシチュエーションに出くわすことは、少ないかもしれません。

「そうなんですよね。自分がやっている音楽に興味を持ってもらえないことはあるけど、憎しみを持たれることはあまりない。スポーツには必ずある勝ち負けが、ミュージシャンにはないんです。みんなが『最高』と言ってくれる環境は、とても幸せではあるけれど、時に『もっと厳しく見られたい』という欲が出てくることもある。だから自分が球場で野球を見たり、負け試合に落ち込んだりするのも、『勝敗のある世界を自分自身で確かめたいからなのかな』と思ったりします」

【プロフィール】
尾崎世界観(おざき・せかいかん)

1984年東京都生まれ。2001年にロックバンド「クリープハイプ」を結成し、ボーカルとギターを担当。2012年メジャーデビュー。2016年、初の小説『祐介』を刊行。2020年12月には小説『母影』が芥川賞候補となって注目を集めた。熱心なヤクルトファンとしても知られている。

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「本当なんてぶっ飛ばしてよ」

2022年12月14日リリース

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【著者プロフィール】
白鳥純一(しらとり・じゅんいち)

1983年東京都生まれ。行政書士業務の傍らでWEBサイト『キングギア』で、本格的に執筆活動を開始。その後、海外スポーツの取材やインタビュー記事を中心に執筆。『web Sportiva』などに記事を掲載している。

【画像】大のヤクルトファン クリープハイプ・尾崎世界観フォトギャラリー

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