高校生のアルバイトの是非。「価格支配力」を持つためには何が必要か (2ページ目)
時間は平等に与えられた資産のひとつ
奥野「もちろん、あなたたちと同じ高校生でも、働かなければならない人はいる。家庭の事情で経済的に苦しくて、家族を助けるために、あるいは自分が学校に通い続けるために働かなければならないとしたら、これはもう働くしかない。
でも、親にちゃんと収入があって、飛びきりの贅沢はできないとしても、子供たちがアルバイトなどで働かずに食べていける環境にあるならば、アルバイトをする前にちょっと考えたほうがいいと思うよ。
別にアルバイトをするな、と言っているわけじゃないんだ。アルバイトで職業体験をするのは先生も賛成だよ。ただ、時給1000円を稼ぐために、つまり目先のお金を稼ぐことだけを目的にアルバイトをするのは、とてももったいないということを言いたいんだ。
鈴木君も由紀さんもまだ若いから、時間なんて無限にあると思っているだろう。でも、僕くらいの年齢になるとわかるんだけど、人それぞれに与えられた人生の時間って、案外、短いものなんだ。
そして、時間は誰にでも平等に与えられている資産のひとつであるのと同時に、この時間をどう使うかによって、将来、自分の得る果実に大きな違いが生じてくる。ここをしっかり考えてほしいんだ」
由紀さん「そもそも鈴木君はどんなアルバイトしようと思っているの?」
鈴木「え? そんなにスキルがあるわけじゃないから、とりあえず飲食とかかな~」
奥野「飲食だって、本当のプロは高いスキルが求められるのだけれども、おそらく鈴木君が言っているのは、いつもアルバイトの募集をしている、ロードサイドのお店とかだよね。
では、そこで時給1000円のアルバイトをすることが、本当に鈴木君の将来のためになるのかどうかを考えてみようか。
時給1000円で放課後に3時間働いたとしようか。これで1日あたり3000円の収入を得ることができる。土日は学校がないから、どちらか1日、6時間働くと6000円。1カ月はほぼ4週だから2万4000円。これに平日1週間あたり2日だけシフトを入れるとしたら、こちらも2万4000円。合計で4万8000円の収入になる。1年は12カ月だから、年収は57万6000円というところだね。
高校生にすればなかなか大金であるように見えるかもしれないけれども、たとえば1年間、アルバイトをせずに英語の勉強を真剣にやって英検1級を取り、翌年、通訳のアルバイトをしたらどうなると思う?
通訳のアルバイトの時給はだいたい3000円くらいなんだ。ということは、さっきと同じような日数を働いた場合、1カ月で得られる収入はいくらになるかな。そう、14万8000円。年収にすると177万6000円だから、鈴木君が時給1000円のアルバイトを必死にこなしたとしても、あっという間にトータルの収入も逆転されてしまうんだ。
鈴木君「......」。
由紀さん「つまり、需要はたくさんあるけれども、供給の少ない仕事をするのがいいってことですね」
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