空振り、おでこ、右足の「珍ゴール」が岡崎慎司にもたらす好影響

  • 田嶋コウスケ●取材・文 text by Tajima Kosuke  photo by AFLO

「いやぁ、神様、いますね(笑)」

 試合後のミックスゾーンに姿を見せた岡崎慎司は、開口一番、そうつぶやいた。

ゴールを決めてチームメイトに祝福される岡崎慎司ゴールを決めてチームメイトに祝福される岡崎慎司 4試合連続のベンチスタートとなったが、73分に途中交代で投入されると、勝負を決定づける3点目を挙げた。岡崎が「一世一代の珍プレー」と形容したその得点は、たしかに不思議な形で決まった。

 コーナーキックの混戦から右SBのダニー・シンプソンがシュート。GKを直撃してフワリと宙に上がったボールを、岡崎が滞空時間の長いジャンプで押し込もうとするが、ヘディングは空振りしてしまう。ところが、バウンドしたボールが岡崎のおでこに当たり、最後は右足で泥臭く押し込んだ。

「あの場面で、誰か他の選手も競っていたんですか?(記者:いや、誰も......)。ハハッ(笑)。もう、周りの状況が全然わからなかったんですよ。(ヘッドが合わずボールが地面に)落ちて、『やべぇ!』と思ったんですけど、おでこに当たって、俺の前にボールがこぼれて。とりあえず、入ってくれてよかった」

 運も味方につけた岡崎が、安堵の表情を見せた理由はもうふたつあった。ひとつは、ニューカッスル戦の4日前に行なわれたW杯アジア2次予選のカンボジア戦である。この試合で初めて日本代表のキャプテンマークを巻いたものの、0−0の状況で痛恨のPK失敗。無得点に終わり、やり切れなさと不甲斐なさを抱えたままイギリスに戻ってきた。「(カンボジア戦で)キャプテンやって、PKを外したと思ったら、こんなゴールが生まれて......」と漏らした言葉からも、胸のつかえが少しばかり和らいでいるようだった。

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