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「人生は掛け算」元競泳日本代表のテレビ局社員・今井月が後輩に伝えたいセカンドキャリアの心得 (2ページ目)

  • 牧野 豊●取材・文 text by Yutaka Makino
  • 岸本 勉●撮影 photo by Tsutomu Kishimoto

【若くして注目を浴びても勘違いしなかった理由】

──現在、上を目指して競技に打ち込んでいる後輩、特に学生に向けてアドバイスはありますか。

今井 スポーツ以外に何かこれといったものを持っておいたほうが、絶対にいいと思います。人生って掛け算だと思っていて、自分という人間に何を掛けられるか、ということです。掛けられるものが多ければ多いほどいいと思います。

 水泳に没頭することも今しかできない貴重な経験であることは間違いないですが、合間を見て、それ以外にも自分といえばこれ、というものが用意できるなら、ぜひそうしてほしいと思います。トップスイマーでも、長い人生を通して水泳だけで生きていくことは難しいと思います。スポーツ以外の何かが勉強なのか、音楽なのかはわかりませんが、何かを見つけることは大切だと思います。

──勉強はやはり大切。

今井 私自身、それほど熱心に取り組んだわけではないので......。ただ、中学の時は学校や海外遠征で学校に行けないことも多かったのですが、授業が急に難しくなるじゃないですか。なので父親にクラブと自宅の移動送迎をしてもらっている車中で、数学のYouTubeをたくさん見て学んだり、夜2時頃まで勉強したりしていましたね。

──やっていたじゃないですか。

今井 いや、高校以降は胸を張れるほどではないですけど、就活の時はしっかりやりましたよ(笑)。

──12歳から23歳まで、ほかの多くの競技なら成人してから集めるような注目を若年の時期に経験するのは、競泳の特異な面ではあります。

今井 たぶん、結果がいい時はちやほやされてきたと思いますし、自分も浮かれていた時もあるかもしれないですが、勘違いしきらずにこられたのかなと思います。一時的にそういう時期があったにしても、水泳をやめたあともちやほやされたり、競技成績に頼って生きていけるとは思っていなかったと言いきれます。

 兄も大学まで水泳競技に打ち込んでいましたけど、進学や就職を重んじるタイプで、昔から「るなは俺よりも水泳を頑張って努力してきたんだから、絶対俺よりも幸せになれよ」とずっと言い続けてくれていました。最初は何を言っているんだろうと、その意味をよく理解していなかったのですが、時を重ねるにつれ、それはきちんと仕事に就くこと、軸のある人間でいることがいい人生を送るという意味であることを理解するようになりました。だから、競技を終えても宙ぶらりんなままでいたら、きっと兄も父も悲しいんだろうなと思って、就職活動を始めたのです。

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