【世界水泳】瀬戸大也と萩野公介。金メダルが生んだ黄金世代のライバル物語 (4ページ目)

  • 折山淑美●文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 計算通りの泳ぎをして優勝した瀬戸の目標は、中学生時代からライバルである萩野と一緒に表彰台へ立つということだった。

「公介が銀メダルを2個獲ってすごい注目されているのをみて悔しいというか、『俺も絶対にやらなければ』という気持ちになりました。僕にとって公介の存在はすごく大きい。優勝したいとは思っていても、公介の調子よさをみると半信半疑のような気持ちだったし……。最高のパフォーマンスが出来て運良く優勝できたけど、記録はまだ公介の方が上。でも自分も優勝したことに自信を持ちながら、満足しないで、これからも切磋琢磨しながらリオでは今回出来なかったダブル表彰台実現できるように頑張りたい」

 こう話す瀬戸を指導する梅原孝之コーチによれば、萩野がロンドン五輪で銅メダルを獲ったのを見てから練習への取り組みが一変したという。そして今回も瀬戸は萩野を追いかけた。いわば今回の彼の金メダルは、萩野という存在があったからこそ手にできたものだともいえるだろう。

 萩野は「自由形で世界と戦えたという収穫があった反面、最後には情けない結果で悔しい思いをした。だがこれを忘れてしまったら、今大会多種目に挑戦した意味もなくなる。非常に悔しいけど将来になって振り返って見た時、バルセロナの夏は必要なものだったと考えられるような結果を出したい」と言う。

 そんな萩野を、北島康介は「俺は公介もよく頑張ったと思うし、これで絶対に強くなると思う。金メダルは獲れなかったけど、いい思いもしたし、ボロクソになるほどの悔しい思いもしていると思う。そういうのは世界大会という場じゃないと味わえないものだから、(萩野は)絶対に強くなって帰ってくると思います。大也も大也でずっと公介の陰に隠れていたけど、ここでトップになって強い意識も芽生えるだろうし……。だからこれからをすごく楽しみにしたいと思います」と話す。

 世界選手権の金メダルは瀬戸に先んじられたとはいえ、萩野がこれからも若手の中心選手として日本水泳界を引っ張っていく存在であることは、間違いない。

 そしてふたりのライバル物語も、新たな章が綴られていく。

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