2013.07.31

【世界水泳】寺川綾が銅メダル。笑顔の裏にあった重圧と不安

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 藤田孝夫●写真 photo by Fujita Takao

銅メダルを獲得し、表彰台で笑顔を見せる寺川綾 世界選手権で初めて上がる100m背泳ぎの表彰台。そこは本当に狙っていた中央ではなく一番低い場所だったが、寺川綾は納得の笑顔を見せた。

 結果は優勝したミッシー・フランクリン(アメリカ)の58秒42に0秒81遅れる、59秒23での3位。4月の日本選手権で出していた58秒84には遙かに及ばない記録だった。

 彼女を指導する平井伯昌コーチは「本当はもっと高い所を狙っているのに現実的な所に落としこんでしまうのは本当にシャクだけど、メダル獲得を続けることは大切だと思うんです」と言うが、寺川自身もそれをわかっている。彼女も、「自分ではもっと高いところを目指してやってきたし、記録もまさかここまで落ちると思ってはいなかったけど、今の自分にある力は全部出し切れたと思うので。これはこれで良かったと思います」と冷静に話した。

 ロンドン五輪後は忙しい日々を送り、本格的な練習を始めたのは11月からだった寺川だが、4月の日本選手権を日本記録で泳ぎ、28歳にしてなお進化する姿を見せた。しかし、5月のジャパンオープンを終えて以降、足の関節に痛みが出てくると不安に包まれた。

「4月の出来がすごく良かったから、もっともっといけると思いながらトレーニングを積んできたし、世界選手権はもちろん金メダルを目指してその争いができるような準備をしてきたつもりです。でも最後でどうしても調子が上がって来なかったところもあって、不安に思う部分があったんです」

 そんな不安は今大会予選の泳ぎでも出ていた。7月29日午前の予選は、テンポの速い泳ぎで前半を29秒19で通過し、ゴールタイムは1分00秒09だった。若干空回りするような泳ぎ。タイム自体は目標通りだったが「前半はバサロをゆっくり行き過ぎたし、1ストローク多かったかもしれない。少し緊張して(体と)気持ちが一致しないというか、1分0秒前半で泳ぐためにどのくらい抑えていけばいいか、という加減がわからなかった」と不安気な表情を見せていた。