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【世界水泳】寺川綾が銅メダル。笑顔の裏にあった重圧と不安 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 藤田孝夫●写真 photo by Fujita Takao

 そして午後の準決勝は、前半を28秒99のハイペースで入るも、後半が伸びずに59秒80でゴール。決勝で58秒台を狙うには、不本意ともいえる結果だった。平井コーチはその泳ぎを「前半の50mはすごく感覚が良かったが、後半は違って前に進めていなかった」と見ていた。一方、寺川は「前半はゆっくり行って後半を頑張る予定だったけど、まったく逆だったので......。ラスト15mからスパートをかけようかどうしようかちょっと迷ってしまって、そのままタッチしてしまった感じです」と苦笑。さらに後半の伸びを欠いたことに不安を感じ、「自分の感覚と実際のスピードが合っていない状態なので明日がどうなるか心配だ」と、迷いがあるような言葉さえ口にしていた。

 それでも準決勝のレースが終わってしばらくすると、そんなモヤモヤした気持ちも吹っ切ることが出来たという。どんな迷いを持とうとも、今日の明日で何が変わるわけではない。ジャパンオープン後からの不調にいつまでも囚(とら)われないで、今できることを100%やり切ろうと思えるようになった。

 そんな気持ちで臨んだ30日の決勝。寺川は予選や準決勝よりゆったりしたストロークで前半を泳ぎ、前日の2レースより遅い29秒35で前半を折り返した。先頭のフランクリンは28秒42で、2番手のエミリー・シーボム(オーストラリア)は29秒06。それでも慌てなかったのは、作戦を完全に後半勝負にしていたからだった。

「準決勝がみんな僅差だったから、決勝ではみんな突っ込んでくると思ったんです。だから前半は抑え気味でいって、終盤にみんなが浮き始めたところで自分がブレーキをかけずにスパートをして、最後まで頑張ればいいと考えていたんです」

 誤算は全員が思ったほどハイペースな入りにならなかったことだ。優勝したフランクリンだけは積極的に突っ込んだが、他の選手は勝負を意識し、前日より抑えたのだ。そのため折り返してからは大混戦になった。寺川も混戦に飲み込まれそうな厳しい状況に追い込まれたが、終盤で何とか差しきって59秒23の3位でゴールした。

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