【陸上】駒澤大の悩めるエース候補・桑田駿介、ホクレンで自己ベスト更新ならずも、三浦龍司の走りに気づいたこと (2ページ目)
【箱根含めて3大駅伝は区間賞が目標】
桑田への声が厳しいのは期待の大きさの表れでもある。だが、練習で走れているのに本番で結果が出ないのは、何なのだろうか。いくつか原因は考えられるが、例えば練習を消化することに一生懸命で、レース本番を想定した練習ができていないからなのか。あるいはレース前の調整の強度が高すぎて本番で力を発揮できないのか。
桑田の性格から普段の練習は全力で取り組んでいるだろうが、レース後半の粘りが薄いことや出力が落ちることを考えると、レース前の練習はもう少し余裕を持ってこなすなど、レースに力を蓄えておく必要があるようにも思える。
「今回は、(三浦選手に)途中までついていけたので、6月の日体大記録会の時よりは内容的に悪くないんですが......。今、結果が出ないのは気持ちの部分が大きいと周囲から見られていると思います。これから夏合宿に入って、一段階強くなっていきたいですし、気持ちの部分で変わったなと思ってもらえるような走りをしていきたいです」
網走でのレースは、自己ベスト更新には至らなかったが、今後につながる気づきがあった。
「三浦選手の走りは参考になりました。外国人選手がペースの上げ下げをしていくなか、三浦選手はペースの変化に惑わされない。つねに一定のペースで走り、相手が落ちてくるタイミングでまたついていくんです。それはすごいなと思いましたし、レースペースが染みついていると思いました」
三浦は13分28秒28をマークしただけに、もし桑田が最後までついていくことができれば、自己ベスト更新はもちろん、13分30秒切りも可能だった。
これでトラックシーズンは終わり、夏合宿に入り、その後は駅伝シーズンになる。
「個人的には3つの駅伝に出て、すべて区間賞が目標ですが、2年目の今年は出雲駅伝が一番難しい壁になってくると思うので、出る前提に準備をしていきたいです。全日本は、昨年はいい走りができなかったですし、箱根は4区のラスト1キロで失速してしまったので、今回は確実に区間賞を狙っていきたいです。チームとしては、今年の駅伝は早稲田や他大学も強いと思いますが、駒澤もまだまだ戦えるぞというのを自分の走りで証明していきたいと思います」
桑田は、決意を秘めたキリッとした表情で、そう言った。
競技人生も普通の人生もよい時ばかりではない。桑田が壁を乗り越えられず、苦しんでいるのは、いずれ駒澤大のエースとなり、さらなる進化と競技人生を豊かにするための修練だが、果たして秋にどんな姿を見せてくれるだろうか――。
著者プロフィール
佐藤 俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。近著に「箱根5区」(徳間書店)。
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