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【陸上】目指すのは世界か箱根駅伝か医学部か 超高校級ランナー・吉田星がインターハイ後に描く未来

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

5000mで13分35秒14の好タイムを出した吉田星 photo by Wada Satoshi5000mで13分35秒14の好タイムを出した吉田星 photo by Wada Satoshi

【ホクレン千歳の5000mで高2歴代2位】

 7月12日、ホクレンディスタンスチャレンジ第3戦・千歳大会(北海道千歳市)の男子5000mA組、留学生も含めた学生歴代7位の記録(131656)を出して1着となった山口智規(早稲田大4年)の走りは見事だった。そして、同様に目を引いたのが、まだ高校2年生の吉田星(東海大札幌高)のダイナミックな走りだった。

 吉田はスタートから積極的に前に出て、先頭集団についた。中盤以降、実業団の外国人や山口に離されるも、今年の箱根駅伝を制した青山学院大の主力候補、折田壮太(2年)に食らいつき、一時は前に出るなど粘りを見せ、高2歴代2位となる133514の自己ベストをマークした。先日行なわれた日本選手権の出場申込記録(133800)もクリアする好タイムだ。

 吉田はゴールすると、そのまま仰向けに倒れて、しばらく動けなかった。

「全力を出しすぎて酸欠になってしまいました」

 レース後、苦笑いしながら振り返ったが、その後は少し複雑な表情を見せた。

「この大会に合わせて練習が満足にできたかと言えば、できていない状態でしたので、監督からは『13分台であればいい。合わせるのはあくまで(7月25日開幕の)インターハイ(全国高校総体)』と言われていました。そういうなかで上振れして1335秒を出せたのはよかったんですけど、内容が......」

 実業団や大学の強い選手がいるなか、スタートからラストまで堂々とした走りを見せての自己ベスト更新。これ以上ない、すばらしいレースをしたように思えるが、吉田自身はあまり納得がいっていないようだ。

「外国人選手のタイムが速いのは理解していましたし、山口さん、折田さんがいるのでレベルの高いレースになると思っていました。そのなかで折田さんには勝ちたいと思い、挑んだんですけど、ラストで負けてしまい、不甲斐なかったです。ラストスパートは、昨年のインターハイの1500m予選の時も伸びなかったのですが、今回もその課題が解消されませんでした。タイムのわりに内容的には今ひとつかなって感じで、あまり喜べないですね」

 タイムは、陸上選手の力を測る上でのひとつの指標になる。それでも、タイムが出て満足するのではなく、内容を重視、追求するところに吉田のアスリートとしての意識の高さ、レベルの高さが垣間見える。まだ高2だが、「世界を目指す」という吉田にとっては、当たり前の作業なのだろう。

 実際、強い選手のよいところを吸収しようという意欲は強い。レース後、折田に自分から声をかけて挨拶し、レースについての話をした。また、待機所では山口に話しかけ、「(先週開催の)日本選手権も見ていました(※山口は1500mに出場して2位)。来年、山口さんと勝負できるようになりたいです」と伝えたという。

 対する山口は「今日はさすがに高校生には負けられないと思いましたが、タレていたら負けていましたよ」と苦笑しながらも、1335秒台を出した17歳を高く評価していた。

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著者プロフィール

  • 佐藤俊

    佐藤俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)、「箱根5区」(徳間書店)など著書多数。近著に「箱根2区」(徳間書店)。

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