【陸上】目指すのは世界か箱根駅伝か医学部か 超高校級ランナー・吉田星がインターハイ後に描く未来 (3ページ目)
【自分はこれ以上できないと思ったら医師に挑戦します】
7月25日から始まる広島でのインターハイは1500mと5000mの二種目に出場予定だが、そこで勝ったら陸上を続けるということになるのだろうか。
「勝てたら続けるということではないです。レースの内容ですね。自分は、数字よりも内容とプロセスをすごく大事にしてきました。何事もしっかりとプロセスを踏んで、内容を見ていかないと自分の感覚がズレた時に、戻すのが難しいと思うんです。
中学から陸上を始めて、強くなりたいと思ったのが中2の時です。それ以降、プロセスも内容も100%ではないですけど、今のところはいい感じで来ているので、それをインターハイで見極めたいんです。結果が振るわない、自分はこれ以上できないと思ったら医師に挑戦します。周囲からは贅沢な悩みをしているなあって言われますが、自分はひとつのことを極めていきたいんです」
内容重視とはいえ、インターハイのような勝負レースは勝ってなんぼのところがある。だが、勝つのも決して容易ではない。周囲は吉田をマークし、倒しにくるだろう。今回、タイムを出したことで周囲からはもちろん、「負けられない」と自分自身にかかるプレッシャーも一段と強くなるのは間違いない。
「ここでタイムを出してもインターハイで負けたら意味がないですから。1500mは絶対に勝ちたいです」
いろいろなプレッシャーをはねのけて勝った先は、本物の強さを証明することになる。それで人は救えないが、多くの人に感動や希望を与えることはできる。それは、吉田にしかできないことで、唯一無二だ。
もちろん、医師の道を歩むのも陸上とは違う意味で大変であるし、その志は医師に必要なものであると言える。個人的にはインターハイ後に急いで決めなくてもいいのではと思うが、どちらに進んでも吉田なら"星"のような存在になれるだろう。
著者プロフィール
佐藤 俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)など著書多数。近著に「箱根5区」(徳間書店)。
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