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【陸上】目指すのは世界か箱根駅伝か医学部か 超高校級ランナー・吉田星がインターハイ後に描く未来 (2ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

【祖父は医師。自分も外科医になりたい】

7月25日開幕のインターハイは1500mと5000mの二種目に出場予定 photo by Sato Shun7月25日開幕のインターハイは1500mと5000mの二種目に出場予定 photo by Sato Shun

 この日の吉田のタイムは、高2歴代2位。昨年4月の日体大長距離競技会で学法石川高の増子陽太が出した133460に次ぐものだ。吉田はその増子を目標としており、タイム的には追いついてきているように見えるが、本人は首を振って否定した。

「増子さんはタイム以上の強さを持っていますから。自分は、中学の時、全中(全国中学校体育大会)の(3000m)決勝を見させてもらい、すごく格好いいなと、増子さんのようになりたいと思ったんです。でも、今は『あこがれたら超えられない』という大谷翔平さんの言葉が自分のなかに響いているので、負けたくないですし、超えていかないといけない存在です。もっと言えば、自分はさらに上を目指していかないといけないと思っています」

 その増子を超えるべく、吉田は上野幌中3年時に愛媛全中の3000mで優勝、さらに高1時の国体(国民スポーツ大会)少年B3000mでは高1歴代3位の8分0712で優勝。今回のレースを含め、トラックでは圧倒的な強さを見せている。

 ロードでは、昨年の都大路(全国高校駅伝)は1区26位、都道府県駅伝(全国都道府県対抗男子駅伝)は1区21位と振るわなかったが、「都大路は足の故障で練習が2週間できず、都道府県は脱水症状で、ロードにはいい印象がないですが、それを変えるためにトラックでがんばって、ロードにつなげていきたい」という。

 高校トップクラスの逸材だけに箱根駅伝に出る強豪大学からも当然マークされているだろうが、吉田自身は箱根駅伝について、どう考えているのだろうか。

「自分は、陸上をやるなら世界で戦いたいと思っていて、箱根駅伝はそのためのプロセス。だから箱根駅伝で大学は決めたくないと思っています。ただ、母親が箱根駅伝を好きなので、もし箱根に出られる大学に行った場合は、両親に恩返しする気持ちで走りたいなと思っていますが、実は他にもやりたいことがあって......」

 有力大学から引く手あまたであろう吉田が他の選手と違うのは、これだけの素質がありながら陸上に固執していないところだろう。吉田には別の世界も見えているようだ。他にやりたいこととは何だろう。

「外科医になりたいんです。祖父が医師だったこともあり、小さい頃から医師か消防士になりたいと思っていました。救急車で運ばれてくる人は箱根駅伝を見ても救われないですが、医師であれば直接的に命を救えるじゃないですか。自分は人の命を救う、命にかかわる仕事をしたいんです。高校に入ってからも陸上を続けるかどうか悩んだ時期がありましたし、正直、今も現在進行形で悩んでいて、夏のインターハイの結果で決めようかなと思っています」

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