箱根出場をわずか1秒差で決めた順天堂大 シード権獲得へエース浅井は「本戦で借りを返す」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

 長門監督も笑みを見せて、エースを称賛した。

「もう、さすがですね。怪我をしていて8月中旬から走り出して、よくここまで戻って来てくれたなと思います。昨年の箱根2区で遅れを取って、流れを作れなかったという悔しさを常にもってやってくれていた。精神力が強いですし、やはりエースの存在は大きいなと思いました」

 浅井は待機所のテントのなかで「突破できてよかった」と小さな笑みを見せた。

「右足首を捻挫して、夏合宿も十分に練習ができなくて、予選会に間に合うかどうかギリギリの状態だったんです。出ても集団走でと思っていたのですが、やはり4年生として悔いを残したくないと思い、前で走りました。スタート前から暑さを感じていたので、想定よりもスローペースになると思っていましたし、そういうなかで後半、どれだけ粘って、タイムを稼げるのか、というのを意識して走りました」

 浅井のスピードはまったく落ちず、留学生集団につづく日本人の先頭集団で走った。エースの走りが、順大を予選突破に導いたと言えよう。

「これで、本戦で借りを返すことができるのかなと思います。やっぱり前回の箱根で自分の走りで終わらせてしまったというか、チームの流れを崩してしまったので、今回はそのリベンジをしてシード権をとって、みんなで笑って終われるようにしたいと思っています」

 浅井はキリッとした表情で、そう言った。

 今回、ギリギリでの予選突破を実現したが、今シーズン、順大は苦難の連続だった。

 第100回の箱根駅伝は総合17位に終わり、惨敗を喫した。チーム再建のため、今井正人と田中秀幸がコーチとして加入し、今シーズンは17位から這い上がるという意味で「下剋上」をチームスローガンに掲げ、スタートをきった。

 関東インカレでは10000mでルーキーの玉目陸(1年)が28分13秒67の自己ベスト、順大歴代3位のタイムをマークするなど、チームはまずまずのスタートがきれた。だが、全日本大学駅伝の予選会は1組目で岩島共汰(4年)が22位、村尾雄己(3年)が40位と振るわず、予選突破が絶望になり、最終的に17位に終わった。「順大、大丈夫か」と、他大学に心配されるほどの内容だった。
 
 このレース後の全体ミーティングがターニングポイントになった。

 服部主将が言う。

「この時、今のチームの不満とか、もっとこうするべきだとか、本音を語り合うミーティングをしたんです。そこで、あいつはこんなことを思っていたんだとか、いろんなことが見えてきた。そこから全員がひとつの方向に向いていけるようになりました」

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