箱根出場をわずか1秒差で決めた順天堂大 シード権獲得へエース浅井は「本戦で借りを返す」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

 日差しが強く、汗が出ていたので、長門監督は「8キロの給水地点では必ず給水を摂りなさい」という指示もした。
 
 10キロの地点での順位は10位と通過ギリギリだった。15キロではエースの浅井皓貴(4年)がいい走りを見せていたが、12位に落ちていた。残りの距離を考えると、ここから巻き返していかないと10位内に入るのは難しい。出走していた選手は、タイムを叫ぶ部員の声や掲示板で、その情報を逐一、入れていた。

「順大、今、10位だぞ」

 吉岡大翔(2年)が走っていると、そんな声が聞こえてきた。

「走っている時、通過順位が10位とか聞こえてきた時、本当にこれは自分のせいでこんな順位なんだと思いながら走っていました」

 吉岡は暑さの影響もあり、後半、伸びを欠いてしまった。

 最終的に総合98位、チーム内4位で走り終えたが、ゴール直後から「不甲斐ない走りをしてしまった」と、悔し涙が止まらなかった。長門監督にキーマンのひとりと言われ、チームの浮沈を背負ってレースに臨んだが、自分の役割を果たせなかった。

 そのため、ギリギリの10位で突破した時、安堵の涙がこぼれた。

「突破できなかったら自分のせいだと思っていました。個人としては安心10割、悔しさ10割ですが、とにかく突破できてホッとしました」

 吉岡はそう言って、ようやく笑みを見せた。

 長門監督は、汗まみれになり、ホッとした様子だった。

「前半から順位が悪くて、タイムを稼いでほしい選手がちょっと稼ぐことができなくて......。なかなかしんどいなというところで、15キロ地点ではどうなるかなと思いました。でも、この夏やってきたことを活かして粘り強く走ってくれて、なんとか崩れずに最後まで来てくれたので、みんなよく頑張ってくれたと思います」

 レースを振り返ると、全体的にまとめた感があるが、やはりエースの浅井の走りが大きなポイントになった。63分49秒で総合14位、日本人2位の好走を見せた。

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