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東海大黄金世代・館澤亨次が同期の現役引退を前に「改めて陸上界は甘くない」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●取材・文 text by Sato Shun

【改めて陸上は甘くない】

 パリ五輪の先には来年の東京世界陸上もある。そこまでは、1500mを軸に挑戦していくという。その先は何をイメージしているのだろうか。館澤のスピードやタフな走りを考えれば、マラソンでの活躍が期待できそうだが。

「いやー、マラソンのイメージはできていないですね(苦笑)。ただ、1500mも大学2年の時にいきなり始めて今まで続いているので、いつマラソンに目覚めるのかわからないですが、将来的に、やりたいのは駅伝です。もちろん今は1500mに集中していますが、僕は駅伝が好きですし、いつか挑戦したいなと思っています」

 館澤が駅伝に戻れば、きっと沿道から大きな声援が飛ぶだろう。あの時代、箱根駅伝で初優勝し、黄金世代に特別な思い入れを持っているファンは多い。

「大学の頃は、たくさん応援してもらって、間違いなく愛されていたなぁと思いました(笑)。だって、普通の大学生が『ファンです』っていろんな人に言われることはないですからね。だからこそ応援してくださる人がいる限りは、応援される選手が先に諦めるのは、どうなんだろうって思います。いろいろ事情があるのかもしれないし、僕がみんなに『頑張れよ』って言えるほど頑張っているのかどうかはわかりません。でも、自分自身に対して頑張れとはいくらでも言えるので、僕は本当に限界を感じるまでは陸上に向き合ってやっていきたいと思っています」

 館澤が少し残念そうな表情で、そう語るのは黄金世代の仲間や同世代の選手が引退をしているからだ。大学時代、ともに1500mに挑戦し、苦しさや楽しさを分かち合った木村理来も昨年、陸上界から去った。

「理来の引退は寂しかったですね。一緒にやってきた仲間だったので。理来に限らず、小松や郡司ら東海大の同期もそうですけど、僕ら世代の選手で辞めていく人が少なくない。その現状を見ていると、改めて陸上は甘くないなと思います。自分たちが注目されたのは、あくまで大学生のなかでの黄金世代で、日本の陸上界から見るとまだまだだったと思うんです。そこにいかに早く気づき、自分に向き合って謙虚さを持ってやっていけるかが大事だなと思っています。そこがスタート地点だと思うんですけど、そこに気がつけなかったり、気がついてもなかなか伸びていかない選手もいて。僕たちはまだ競技力が伸びる年齢なので、何かを諦めるのはまだ早い。もちろん、もう若くはないと思うけど、まだまだこれからの自分や黄金世代に期待してほしいと思います」 

 卒業後の数年を飛躍のためのモラトリアムと考えれば、これから先の館澤に期待が膨らむ。コツコツと記録を積み重ね、いつか必ず大爆発してくれるだろう。そういう選手であることは、箱根駅伝の6区で区間新を出した走りで、すでに証明済みだ。

著者プロフィール

  • 佐藤俊

    佐藤俊 (さとう・しゅん)

    1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)、「箱根5区」(徳間書店)など著書多数。近著に「箱根2区」(徳間書店)。

【画像】徳光和夫が愛する「巨人」と「箱根駅伝」を語る・インタビューカット集

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