久保建英のいとこ・久保凜は日本陸上界期待の16歳 五輪コーチの山下佐知子が長所を解説 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

【五輪と日本記録を目標にする裏付け】

久保凛は、少し脇の開いた独特なフォームが特徴 photo by 中村博之久保凛は、少し脇の開いた独特なフォームが特徴 photo by 中村博之 久保は5月に400mでも自己記録を1秒44更新する55秒04をマーク。この記録は昨年度の高校ランキング11位に相当する好記録である。自分の体がどう動けば速く走れるか、本能的にわかり始めているのだろう。

「ドルーリーさんより骨盤の前傾が強いところがあるので、ペースが遅かったり、力んだ時にはすごく足が流れているように見えるレースもあります。しかし、今年の静岡国際800mのラスト100mからスパートした時は、上下動もないのに足が本当に前さばきになっていてすごいなと思いました。先ほど触れたように、力みなく足が振り出されている走りでした。本当に遊びの延長で走っている印象を受けます」

 静岡国際800mをU20日本記録で走った時は、400mを60秒で引っ張ったペースメーカーに余裕を持って付いていき、600mまでを少し落としてラスト100mで後続を引き離すレース展開だった。山下コーチは、その部分にまだ改良点もあるという。

「東大阪大敬愛高には2年前くらい前から長距離と中距離を教えられる指導者が来られて、『五輪も可能性があるから目指していきたい』『日本記録レベルを』と話していたそうです。今はまだ、日本で勝つことを優先していると思いますが、以前に杉森美穂さんが日本記録を出した頃(2005年、2分00秒45)は1分台を目指して、ひとりでガンガン攻めて記録の壁をこじ開けようとしていました。

 久保さんはまだ高校生ですし、陸上を始めてからの年月も浅いので、いきなり今季日本記録への挑戦というわけにはいきませんが、久保さんのような動きができる、潜在能力の高い選手はあまりいないと思うので、今後が楽しみです」

 だからこそ、指導者が「オリンピック」「日本記録更新」を目標として言葉に出しているのだろう。

「東京五輪の1500mで田中さんが3分台を出して入賞した時は『まさか』と驚きだったけど800mでもそういう選手が出てほしいですね。その意味でも久保さんには800mや1500mで世界を狙ってほしいと思います。

 昨年はチームが全国高校駅伝に出ていましたが(久保は出走せず)、駅伝にチームメイトと一緒に取り組むことは、いいことだと思います。チームワークとか、楽しめる範囲とかでやるのであれば、いい練習になると思うし、生理学的な意味でも有酸素能力も高められるので、ある程度距離を踏む練習をすることも大事です。

『これ、狙います』という時にはその種目に特化することも大事ですが、年間を通じてひとつのことに特化させなくてもいいと思います。それはシニアの選手にも言えることで、マラソン選手でも時として3000mや1500mに出たり、1500mの選手がハーフマラソンを走ったりするのと同じことです。

 高校生なら体育の授業もあるので、ほかのスポーツをやったりしてもいい。久保さんは小学校時代にずっとサッカーをやっていたそうなので、その経験が今の股関節の使い方に影響を与えているのかどうかも、興味深いですね」

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