駒澤大ルーキーが自己ベスト連発 箱根駅伝へ向けて桑田駿介がチームの風評を吹き飛ばす (3ページ目)

  • 和田悟志●取材・文 text by Wada Satoshi

【Sチームの環境に揉まれて成長中】

 桑田は主に大八木総監督の指導を受けており、1年目からSチームのメンバーと一緒に練習をすることもある。

「大八木さんのほうから『やってみないか』と声をかけていただいて、4月中から、Sチームの先輩方がペースを落としてやる時に一緒に練習をやらせてもらっています。よい経験をさせてもらっています」

 今季より"Ggoat"として活動しているSチームには、トヨタ自動車で活躍する駒大OBの田澤廉や鈴木芽吹、太田智樹(早大OB)がおり、現役学生では主将の篠原倖太朗(4年)がその一員。まだ"テスト生"とはいえ、入学間もない桑田がSチームに抜擢されるのは、異例のことのようにも思える。

「高校時代は、地道に、毎日コツコツと走り込んだ。そういう練習で基礎ができたと思います」と桑田は言う。一方で、スピードという点では課題を残していたが、その課題こそ、"伸びしろ"と捉えることもできる。

「スタミナがあり、ひとりで(レースを)走れるのでマラソン向き、ロード向きの選手だが、スピード的にはキレがある選手ではない。将来マラソンをやるにしても、今はマラソンでもスピードが必要なので、トラックでスピードをつけていこうと話をしています」(大八木総監督)

 例えば、400mのインターバルは、倉敷高では72秒(1km3分ペース)ベースだったが、駒大のSチームは本数が多い上に速い(時期により設定は異なるが、「66秒」などで行なっているという)。

「先輩方にとっては落とした練習でも、僕自身はいっぱいいっぱいなんですけど、それにしっかり付けていけている。自信になっています」

 質・量ともに飛躍的に上がり、面食らいそうなものだが、桑田は臆することはない。大八木総監督も桑田のポテンシャルの高さを認めて、こう語っている。

「練習の中身を見ていると、力的にはもう(5000mで)13分40秒を切るかどうかまできている。全部が全部ではないが、Sチームのテスト生として段階を踏みながら芽吹や篠原と一緒に練習をやらせています。その練習ができ始めて、だんだん余裕度が出てきた。たぶん夏を過ぎたらSチームに入ってくるんじゃないかな」

 桑田の高校時代のチームメイトには、世界クロスカントリー選手権U 20男子を制した実績を持つ留学生のサムエル・キバティ(現・トヨタ自動車)がいた。ワールドクラスのチームメイトに触発され、早くから世界を意識していたのかと思いきや、「(キバティは)レベルが違ったので、世界に意識が飛ぶことはなかった」と言う。だが、大学に入り、レベルの高い環境に身を置き、その意識は変わった。こう、決意を口にする。

「近くにいる先輩方が世界で戦えるレベルに達しているので、自分も考えないといけないなって今は思っています。まだ、世界で走るようなレベルには至らないので、頑張っていきたいです。いずれはマラソンで世界大会に出ていきたい」

 もちろん、駅伝でも大きな戦力となりそうだ。

 駒大は今年の箱根駅伝で、優勝候補筆頭と目されながらも、青学大に敗れて連覇を逃した。奇しくも、桑田が在籍した倉敷高も同じような境遇にあった。桑田が高校2年時に全国制覇を果たしながらも、3年時には2位に終わっている。

「倉敷初の全国連覇を目指して1年間やってきましたが、達成できなかった。自分たちの代で負けてしまったことはすごく悔しい。その分、大学の駅伝で活躍したいと思いました。チームは三冠を掲げているので、自分が走って少しでも貢献したいです」

 このように、桑田は1年目から活躍を誓っている。

 ここまでトラックで順調な滑り出しを見せているが、むしろ桑田の本領が発揮されるのはロードシーズンともいえる。ひと夏を越えて、どんな進化を見せるのか。今後の桑田の活躍がますます楽しみだ。

ロードでの実力は折り紙付きの桑田ゆえ、ひと夏越えた姿が楽しみだ photo by Sportivaロードでの実力は折り紙付きの桑田ゆえ、ひと夏越えた姿が楽しみだ photo by Sportivaこの記事に関連する写真を見る【Profile】
桑田駿介(くわた・しゅんすけ)/2005年5月17日生まれ、愛知県出身。倉敷高(岡山)→駒澤大1年。高校時代は2年、3年次にインターハイ5000mに出場(予選敗退)、全国高校駅伝(都大路)には3年連続で4区に出走し、区間6位、2年連続の区間賞を獲得。2年次には全国制覇に貢献した。自己ベストは、5000m13分49秒69、10000m28分59秒87(2024年6月10日現在)。

プロフィール

  • 和田悟志

    和田悟志 (わだ・さとし)

    1980年生まれ、福島県出身。大学在学中から箱根駅伝のテレビ中継に選手情報というポジションで携わる。その後、出版社勤務を経てフリーランスに。陸上競技やDoスポーツとしてのランニングを中心に取材・執筆をしている。

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