「このままじゃ3位以内にもいけない」箱根駅伝優勝を目指す駒澤大・鈴木芽吹主将が抱えていた不安「本当にひどかったので」ミーティングを開いた (5ページ目)

  • 藤井みさ●取材・文 text by Fujii Misa
  • 北川直樹●撮影 photo by Kitagawa Naoki

【自分たちの走りができれば、負けない】

 ここまで、出雲駅伝では2位と1分43秒差、全日本大学駅伝では2位と3分34秒差と、圧倒的な強さを見せている。鈴木の口からも「去年の自分たちを超える」という言葉がたびたび聞かれ、他の大学との勝負というより、自分たちとの戦いを意識しているのではと感じることもあった。

 その点について鈴木は「もちろん他大学のことは意識してないわけじゃないんです。ただ、本当にいい練習ができているなかで、冷静に焦らず自分たちの走りをすれば絶対勝てるという自信がチームとしてあるので、そういった意味では本当に他大学がどうこうというよりは、自分の走りをしっかりするという、自分たちの戦いになるのかなとは思います」と話す。

 チームとして考える理想の形とは、「前半でしっかり先頭に立ち、後半の区間はさらに自分たちの走りをして差を広げ、圧倒的な形で勝つ」こと。大八木総監督からも「区間3番以内で」と言われており、チーム内のミーティングでも戦い方を共有し、全員の共通認識として持っている。

 実際、出雲駅伝では6区間中区間賞が3人、区間2位が1人、区間3位が2人。全日本大学駅伝では8区間中区間賞が4人、区間2位が3人、区間3位が鈴木のみという圧倒的な成績をおさめている。

 鈴木は全日本ではエース区間の7区を任され、「自分がどれだけいけるか試したい」と挑戦する気持ちもあり、突っ込んで入った。結果的に後半はペースが落ちてしまい、「自分の弱さを実感しました」とあらためて課題を認識し、最後の箱根駅伝につなげようとしている。

 最後の箱根駅伝では2区を希望している。以前から走りたいという気持ちはあったが、ケガや調整不足などもあり2年時は8区、3年時は4区にまわっている。

 3年連続2区を担当した田澤は前回大会で「芽吹が調子よければ2区を走ってほしかった」と言っており、鈴木にもそう伝えていたという。

「僕が仮に調子がよかったとしても、やっぱり2区は田澤さんなんじゃないかなというのはありました。実際走るか走らないかは別として、そこを目指す過程というか、取り組みはすごくよかったなと思っています」

 人間的に大きく成長し、名実ともにチームを引っ張る存在として臨む最後の箱根駅伝。「2年連続三冠というよりは、このチームで三冠を果たしたい」と強い思いで語る鈴木の、学生ラストレースを楽しみにしたい。

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【プロフィール】
鈴木芽吹 すずき・めぶき 
2001年、静岡県生まれ。長野・佐久長聖高を卒業し、現在は経営学部4年。箱根駅伝は、1年で5区、2年で8区、3年で4区を走っている。2024年箱根駅伝は主将として臨む。

プロフィール

  • 藤井みさ

    藤井みさ (ふじい・みさ)

    ライター・カメラマン・編集者。早稲田大学卒業後、JR東日本に入社し、駅員・車掌を経験。出版社、ベンチャー等を経験したのち、朝日新聞社「4years.」編集者として大学スポーツ全般に関わる。2022年よりフリーランス。陸上を中心としたスポーツ取材のほか、ビジネス系、カルチャー系媒体でも執筆。趣味は旅と野球観戦とPerfume。

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