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【箱根駅伝・今昔の思い】城西大・櫛部静二監督 「早大三羽烏」の一角は理論派コーチ (4ページ目)

  • 牧野 豊/取材・文 Text by Makino Yutaka

――100年以上の長い歴史の中で、変わらず人々が箱根駅伝に魅了される理由は何だと思いますか。

「メディアへの露出が高くなったこと、高校野球のような学生スポーツであること、母校愛、さらに言うと選手の出身高校の地域性にも波及する魅力があるからだと思います。時代が変わりゆく中で変わらない魅力、また選手にとってもお金では買えないロマンがある」

――一方で、日本代表の国際競争力という視点から見ると、近年では少し変わってきた印象はありますが、箱根駅伝が弊害になっているといった批判もあります。

「特にトップクラスに成長しそうな選手に対しては、そうならないような指導をずっと心がけています。もともと箱根駅伝の創始者である金栗四三さんは当初、アメリカ横断駅伝などの案を立てたように、世界で戦える選手の育成が箱根駅伝の本来の目的です。その本質を忘れないよう、今は世界で戦う前提での箱根駅伝にはなっていないと感じていますので、出場するチームすべてが世界基準を目指す場になってほしいです。オリンピックや世界選手権に学生時代から目指す選手が増えていけば、自然と箱根駅伝自体のレベルも上がっていくはずです。本来の本質を理解し、忘れないようにしなければと思います」

――100回目という節目の大会に出場することについては、どのように捉えていますか。

「100年も続いている大会の節目に、出られるのは純粋にうれしいです。1年前、前回大会の出場権を獲得する前から意識してきました。100回大会に出場することは、それ以降のチームに大きな影響を与えると考えていたので、前回大会は初めて学生たちに『3位以内』という目標を明確に出しました。それに賛同してくれたかどうかわかりませんが、頑張ってくれた結果としてシード権を手に入れられました」

――昨年出走した10人は、全員が3年生以下でした。5区区間賞の山本唯翔選手(4年)、2年目のビクター・キムタイ選手、斎藤将也選手も順調に成長を遂げ、今季は出雲駅伝3位、全日本大学駅伝5位と共にチーム史上最高成績を収め、箱根駅伝でも過去最高成績の6位を上回る成績が期待されています。

「正直、トップクラスの学校と比較すれば、地力(トラック種目を含めた自己ベスト)は劣るかもしれません。でも前回の箱根駅伝では、地力面で強豪校に及ばなくても戦う駅伝を実践できましたし、戦える実感も得ました。選手たちも順調にトレーニングを積んでいますので、昨年以上に戦えると信じています」

PROFILE
櫛部静二(くしべ・せいじ)/1971年11月11日生まれ(52歳)。山口県出身。早大時代には、入学1年目から主力として活躍。箱根駅伝に4回出走し、3年時は1区区間賞の快走を見せ総合優勝、4年時は9区区間3位で総合2位に貢献する。2001年に創部したばかりの城西大のコーチに就任。並行して競技も続けていたが09年から監督となる。選手育成の基本は学生の目的に合わせた指導の中、トラック競技(五輪種目)での競技力向上、また卒業後を見越した指導を心がけ、2016年リオ五輪には村山紘太(10000m)、2021年東京五輪には山口浩勢(3000m障害)と、卒業後も継続して指導にあたっていた選手をオリンピックに2大会連続で輩出している。

著者プロフィール

  • 牧野 豊

    牧野 豊 (まきの・ゆたか)

    1970年、東京・神田生まれ。上智大卒業後、ベースボール・マガジン社に入社。複数の専門誌に携わった後、「Jr.バスケットボール・マガジン」「スイミング・マガジン」「陸上競技マガジン」等5誌の編集長を歴任。NFLスーパーボウル、NBAファイナル、アジア大会、各競技の世界選手権のほか、2012年ロンドン、21年東京と夏季五輪2大会を現地取材。229月に退社し、現在はフリーランスのスポーツ専門編集者&ライターとして活動中。

【写真】駒大スポーツ新聞「コマスポ」編集部・インタビューカット集

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