田澤廉との合宿で「何ひとつ勝てなかった」と刺激 学生ハーフ優勝の駒澤大・篠原倖太朗「エースには自分がならないと」 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 日刊スポーツ/アフロ

【田澤廉との合宿で刺激を受けた】

 田澤の強さは日常から感じていたが、さらに痛感する出来事があった。2月、篠原は田澤と鈴木芽吹(駒澤大・3年)と標高1500mの高地にあるアメリカ・アルバカーキでの合宿に参加した。トラックを中心に練習を積んだが、田澤には一度も勝てず、常にラストで離される展開だった。

「田澤さんには、何ひとつ勝てなかったですね。田澤さんは日本代表の選手なので代表選手になるために必要なことがわかりましたし、世界で他のノイズをシャットアウトして、陸上競技に集中できる環境で一緒に練習できたことは本当にいい経験になりました」

 世界を目指す田澤との合宿生活で、篠原は競技についてはもちろん、陸上への取り組み方、意識、人としてどうあるべきか等々、多くのことを学んだ。おそらく田澤からすれば、自分たちの代からひとつの下の鈴木、2個下の篠原に自らの経験を伝え、今後の個人の成長につなげ、それをチームに還元し、常勝軍団を作り上げてほしいという気持ちがあったのだろう。

 篠原も、田澤―鈴木とつながるラインの次には自分がいることを自覚している。

「エースには、自分がならないと、と思っています。そのためには、結果を出していかないといけないですね。今シーズンは、田澤さんと芽吹さんが1万mで勝負していくので、自分も1万mで勝ちにいきたいと思っています。目標は、芽吹さんが大学2年の時に出した27分41秒68です。それをなんとか越えたいですね」

 さらに今までと異なり、自分をより出して行こうとも考えている。

「全日本も箱根も区間2位で、自分としては、まとめて走れたかなと思ったんですけど、あまり反響がなかったんです(苦笑)。今までは裏で支えるような感じでしたが、今年は大目立ちしていこうと思っています」

 篠原は、そういって笑顔を見せた。

 大八木監督は、篠原の成長に目を細める。

「だいぶ力がついてきましたね。それに謙虚な姿勢がいいですよ。アメリカで田澤と一緒に練習をしたら、かなわなかった。自分の弱さを自覚しているので、ちょっと結果が出たからといっても驕らず、上を目指していこうという気持ちがある。そのために一生懸命に練習していますし、そういう子はこれからも伸びていきますよ」

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