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箱根駅伝、2年連続シード落ちの東海大で何が起きていたのか。エース石原翔太郎は「練習に誰もついてこない」 (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 日刊スポーツ/アフロ

【チーム内にあった意識の差】

 東海大は、塩澤稀夕(現富士通)、名取燎太(現コニカミノルタ)、西田壮志(現トヨタ自動車)ら3本柱が卒業してからもうひとつチームがまとまりきらず、方向性にも迷いが生じていたように見える。箱根予選会で9位に終わった時、吉田は「自分もチームもこの順位でよいわけがない。このままだと終わってしまう。そういう危機感をもって箱根に臨みたい」と涙を浮かべて、そう言った。予選会はいけるだろうと高を括っていたチームに、吉田は走りで「甘くないぞ」と示したが、それがどのくらい他の選手に響いたのだろう。

 その頃、いや、今回のチームのスタートから選手内にギャップがあったと両角監督は語る。

「宇留田ら4年生は、今年は気持ちをひとつにしてワンチームで戦おうというのを掲げていました。4年生はすごく生真面目な子が多くて、自分たちの理想とするワンチームはこういうものだというのを強く打ち出したんです。たとえば私生活から厳しく管理していこうとしたのですが、2、3年生とかの賛同を得られず、反発されていました。そういう経緯もあって、なかなかワンチームになれないまま終わってしまった」

 宇留田はキャプテンとして、その責任感からなんとかチームを立て直そうした。2、3年生たちも頭では宇留田の言葉を理解していたが、現実的には受け入れられず、しこりを残したまま駅伝シーズンに入ってしまった。

 練習に対する取り組みにも問題があったと松崎は語る。

「過去の練習ができているので、それでいいって満足しちゃっていた。個人としてもチームとしても考えが甘くなっていた。それが箱根で出てしまったと思います」

 速くなろう、強くなろうという意識や意欲が一部の選手に欠けていたのは、石原も感じていた。

「復路で崩れたのは、チームの底上げができていないからだと思います。中間層を含めて個々がもっとレベルアップしていかないといけなかった。正直、その部分では物足りなさがありました。練習のなかでも追い込める選手とそれができない選手がいるんですが、もっと追い込める選手が出てこないといけない。自分はふだんはひとりで練習をしているんですが、そこに誰もついてこない。そこに、どれだけみんながついてこられるか。自分に続いたり、追いかけるレベルの選手が出てこないと来年も厳しい結果になると思います」

 石原は、厳しい表情で、そう語った。

 東海大の最大のメリットは、石原という学生トップクラスのエースがいることだ。彼から学ぶことが多いはずだが、その生きた教材をチームとして活かしきれていない。中央大は吉居大和(3年)を軸に、グループを作って吉居レベルの質の高い選手を生み出そうと努力している。駒澤大は田澤廉(4年)に追いつこうと鈴木芽吹(3年)や佐藤圭汰(1年)らが一緒に高いレベルの練習をこなして成長してきた。それだけに石原が「ひとりで練習している」という現状は、選手が自ら強くなる機会を無駄にしているようにも見え、衝撃的だった。

 松崎は、このままだと次回の予選会も危うくなると感じている。

「次回、予選会を通過して本戦でシード権を確保するという目標を達成するには、石原に喰らいついていく選手が出てこないとダメだと思います。後輩たちは頑張っているけど、まだ上と下のレベルの差が大きいですし、上のレベルに合わせていくことができていない。石原がいる間、個々が変わっていかないと今回の復路のようにずるずるといって終わってしまう。そもそも予選会の突破すら容易にいかなくなる。そのくらい大変な状況にあることを後輩たちは自覚してほしいと思います」

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