「35キロ過ぎから7キロの世界は別次元」。マラソン其田健也はトップ選手との差を経験し、パリ五輪を狙う (2ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by 日刊スポーツ/アフロ

 翌2021年のびわ湖毎日マラソンでは、2時間8分11秒を出した。そして、今年の東京マラソンでは、2時間7分23秒の自己ベストで日本人2位となり、MGCの出場権(2023年10月15日開催)を獲得した。だが、其田にとっては、タイムとは裏腹に悔しい結果に終わった。

「東京マラソンは世界陸上の選考もかかっていたので、なんとしても結果を出そうと思っていましたし、2時間5分台を目標にしたんですけど、タイムが伸びなくて......。(鈴木)健吾(富士通)君が30キロ過ぎから飛び出して行ったのを間近で見ていたんですけど、ついていけなかった。キロ2分58秒のペースで練習してきて、直前の仕上がりもかなりよかったので自信があったんですけど、それでも勝負できなかったのは悔しかったですし、自分の弱さを痛感したレースになりました」

 収穫はMGCの権利を獲得したぐらいで、むしろ明確な課題を突きつけられた。鈴木健吾がレース前にかなり走り込んでいるのを聞いており、それがレースの結果にも反映されていた。その走り込みが其田は足りなかったと分析した。

 そうした反省を活かしつつ、其田は現在、ニューイヤー駅伝、そしてMGCに向けて、練習に励む日々だ。

 MGCは、どういうレースだととらえているのだろうか。

「MGCはタイムではなく、確実に2位以内に入らないと(2024年のパリ五輪に)いけないので、絶対に外せない。さいわい、今年は東京マラソン、ベルリンマラソンと大崩れしないレースが続いているので、来年のMGCまでひとつも外さずに行ければと思っています。とにかく出たレースでは負け癖をつけないという意味でも順位にこだわっていきたい」

 其田は、きわめて堅実なレース展開をしており、そもそもレースで1発を狙うタイプではない。たとえばレースでキロ2分58秒のペース走るならそのペースでの練習をこなしてレースに臨む。練習をコツコツとこなし、練習どおりにレースをこなすタイプだ。そして失敗がほとんどない。タレない、落ちないのが其田の真骨頂でもある。また、イメトレもよくしている。ジョグの時からレースを考え、ゴールした自分をイメージしている。

 前回(2019年)のMGCは、テレビで見ていた。

まだ、マラソンに移行したばかりで自分がその場に立って走ることは想像できなかった。中村が優勝した時は、「おめでとうございます」とLINEを送った。しかし、改めて映像を見てみると、あの時、走って挑戦したかったという思いが強くなり、悔しさが募った。そのMGCに、来年、其田は臨むことになるが、そこで勝つためには「高い総合力」が必要だという。

「MGCは、読めないレースですよね。前回の設楽(悠太・Honda)さんのようにバーンと飛び出す人がいるかもしれないですし、スローペースも予想できます。いろんなパターンに対応するには、総合的な力が必要になってきます。スピードだけ磨いてもダメですし、後半余裕がないとペースアップできないのでスタミナも必要です」

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