「目標は世界一のマラソンチーム」三菱重工はこだわる独自の選手育成 (3ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

 ニューイヤー駅伝に出場する選手は日本のトップクラスだが、箱根駅伝ほど盛り上がらない。実業団の大会のなかにMGCのようなレースをつくるべきではないかという声もあるが、いくらレースを設けても選手のレベルが上がらないと盛り上がらないという意見もある。

「選手のレベルがワールドスタンダードになっていかないといけないですね。8月に田中希実が出場したゴールデングランプリの女子1500mはテレビで放映されたけど、男子1500mはなかった。出場した的野(遼大)には『タイムが出ないし、タレント性がないから放映されないんだ。とにかく日本記録を出そう! そうしないとずっと前座だよ』と言いました」

 選手の強化は一朝一夕には進まないが、MGC開催で国内マラソンのレベルが上がったのは事実だ。選手の努力と、その能力を発揮できるのにふさわしい場を与えることが、競技力を高めることにつながる。

「マラソンの実業団選手権があってもいいかなと思います。マラソンの日本一を決める大会で、賞金もつく。それを陸連主催ではなく、実業団でつくる。賞金はスポンサー次第ですが、あったほうが選手のモチベーションが上がります。表彰式も古風な感じにやるのではなく、ゴールした瞬間に優勝カップと賞金を渡す。ライブ感があるほうが絶対に盛り上がると思うんですよ」

初マラソンで人生を変えた吉田祐也>>

 マラソンはプロ野球のように年間100以上の試合があるわけではない。年間1、2レースで、あとはひたすら練習の日々だ。そんな修行僧のような日々に報いるためには、名誉だけでなく、賞金という形で勝者をたたえるべきではないだろうか。海外ではむしろそれが普通である。

 そういう意味で、スポンサー付きのマラソン日本一を決める実業団の大会は、自然とトップ選手が集うことになり、実現すると非常に面白い。

 ちなみに、三菱重工は9月1日付でMHPSから名称が変更になった。

「会社にスポーツ推進センターができて、浦和レッズ、ラグビーのダイナボアーズ、それに野球とマラソン部もそこに入って強化するそうです。レッズをはじめ、いろんなスポーツとコラボできると思うので、そういう楽しみはあります。僕は『名前を変えてやるんだったら、トヨタに勝とう!』と言っています。ウチと同じくサッカーも野球部もラグビーもマラソンもあるので、いいターゲットですよ。やるなら日本一を目指さないと。その先の世界が見えないので」

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