2020.12.27

初マラソンで人生を変えた吉田祐也。
箱根で競技人生を終える予定が…

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sato Shun

知られざる実業団陸上の現実~駅伝&個人の闘い
GMOインターネットグループ(2)

 GMOインターネットグループ(GMOアスリーツ)は、箱根駅伝を盛り上げた青学大出身の選手が多いせいか、スター選手の集団のような印象がある。箱根駅伝3連覇、大学駅伝3冠を達成した時のエース・一色恭志(ただし)をはじめ、ダブルエースと言われた下田裕太、元キャプテンの森田歩希、そして今年4月には吉田祐也が入社した。

 吉田は所属して1年も経っていないが、実業団という環境とチームについて見えた風景はどんなものだったのだろうか----。

今年12月の福岡国際マラソンで優勝したGMOの吉田祐也 吉田を見ていると、人生はほんの数時間で変わるものだなぁ......という驚きと同時に面白さを感じてしまう。今年1月の箱根駅伝は4区で、昨年、相澤晃(東洋大→旭化成)が出した区間記録を破る快走で、青学大の2年ぶりの優勝に大きく貢献した。

 一躍注目を浴びた吉田だったが、当初は箱根駅伝を最後に、競技を引退する予定だった。

「箱根駅伝が終わった時点で、僕の競技人生はほぼ完結していました。その3日後に『マラソンに出るか』と原(晋)監督に言われたんです。その時は、最後にマラソンに挑戦して、学生生活を120%やり切って卒業するか、あるいは箱根は走れたけどマラソンはボチボチだったなぁ......で卒業していくのか。どっちかなという感じで、普通に現役最後のレースという位置づけで考えていました」

 別府大分毎日マラソンまで約1カ月しかなかったが、吉田は不安よりも楽しみが多かったという。そして2月2日、吉田は初マラソンを2時間8分30秒で駆け抜け、日本人トップ、総合3位という結果を叩き出した。

「いま考えてみると、よくあんなペースで走れたなと思います。レースまで練習量は少なかったですし、最低限の準備しかできなかった。ただ、コースが自分にフィットして、レース展開も合っていた。そういういろんな条件が重なっての結果ですし、まぐれと言っても過言ではないというのが僕の正直な感想です」

 この結果により、マラソン強化戦略プロジェクトリーダーの瀬古利彦が「やめるのはもったいない」と言うなど、吉田の考えとは裏腹に周囲から現役続行を推す声が増えていった。