神野大地、東京マラソンの内幕。なぜ今回は腹痛が起きなかったのか (5ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sportiva

 レースが終わってまだ数日だが、表情が変わったなと感じた。

 ベルリンマラソン以降は、結果を出すことにとらわれ、ストレスも抱えていたのだろう、表情が常に緊張していたように見えた。だが、つきものが落ちたようにさっぱりとした表情からは、ひとつ山を越え、自分への確固たる自信を垣間見ることができた。MGCの挑戦権を獲得しただけだが、この切符を掴み取るためにかけてきた時間と労力を考えれば、神野にとって、この結果はとてつもなく大きな意味があったのだ。

「神野くんは、1回成功すれば絶対にいける。その1回が難しいんだけどね」

 レース前、高橋尚子は神野にそう語ったという。そして神野は、その1回をついに超えた。その源になったのは、「心の余裕」ではないだろうか。

 マラソンはメンタル勝負である――。人生最大の挑戦をひとつ乗り越えた神野は今、その言葉を噛み締めつつ、さらに強くなるためにエチオピア、ケニアで自分と戦う準備を進めている。

5 / 5

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る