神野大地、東京マラソンの内幕。なぜ今回は腹痛が起きなかったのか (4ページ目)

  • 佐藤俊●文 text by Sato Shun
  • photo by Sportiva

 そのためベルリンマラソン以降、スタッフは腹痛問題を口にしないように提案したこともあったという。

「一切、腹痛からシャットダウンしようという案も出たけど、僕は『それはできない』と言いました。メディアはそこを気にしてくるだろうし、『その質問をやめてください』というのもしたくなかった。腹痛とトコトン向き合いたいと思っていたんです。でも、医学的には何の問題もない。じゃあどうするのかって話になった時、中野さんと(髙木)聖也さんから『起きたらどうしようじゃなく、腹痛は起こるもの。起きてからが勝負でしょ』というが話が出たんです。そういう心の余裕というか、心の持ちようでレースに臨もうって」

 メンタルが原因かもしれない、というのは神野も薄々は気づいていたのかもしれないし、それを認めたくなかったのかもしれない。だが、最も信頼する中野の説明によって納得することができた。「心の余裕」の重要性を学び、今回、それを初めてレースに反映することができた。

「腹痛は、今回たまたま出なかった可能性もありますが、やっぱりメンタルの部分が大きかったのかなと思います。1回、腹痛が出ない経験ができれば、それが今後のマラソンに活きるし、僕のマラソン人生はもっといけると思っていた。今回、ひとつの成功体験を得られたのは、すごく大きいですね」

 この成功体験が、今後の神野のマラソンに及ぼす影響は非常に大きい。

 おそらくMGC本番では腹痛を恐れず、攻めのマラソンができるはずだ。だからといって勝てるかどうかはわからない。MGC本番は、タイムも実力もある強力なライバルたちが神野の前に立ちはだかることになるからだ。

 これから半年で、どのくらい成長できるかが勝負になる。

「今回、棄権する人が出るなど、あの過酷なレース環境下で、しかもラストチャンスでMGCの切符をつかめたのは自信になりましたし、これからはどんなプレッシャーにも勝てるんじゃないかと思います。MGCも、今までやってきた取り組みや自分を信じて臨めばやれるんじゃないかなと。無理にそう思うんではなく、本当にチャンスがあるんじゃないかなと思っているんです。力は僕よりも上の人が大勢いますけど、本番は9月ですからね。すごく楽しみです」

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