神野大地、東京マラソンの内幕。なぜ今回は腹痛が起きなかったのか (3ページ目)
一方、村山のフォローで息を吹き返した神野は、25キロで32位だった順位を30キロでは24位、そして35キロでは16位にまで上げていった。
「35キロでMGCを初めて意識しました。そこでタイムを見たんですが、『これは絶対にいける。今までダメだったのが続いていたけど、これでやっとMGCを獲れる』と思いました。油断しちゃいけないですけど、この距離でもし腹痛が起きても絶対に大丈夫だという余裕があったので、最後の7キロは初めてマラソンが楽しいなって思いながら走れましたね」
ゴールに向かうなか、沿道からは「神野、がんばれ!」「ラスト!」という声がかかった。 大声援のシャワーを浴びて、ゴール。すると、小さなガッツポーズが出た。
「恥ずかしながら出ちゃいました(笑)。でも、その『よし』っていうのが、僕の思いだったんです。優勝しているわけでもないし、自己ベストを更新したわけでもない。今まで普通に走っていれば(MGCを)獲れるでしょという感じだったので、今回獲れてホッとした。その気持ちが、あのガッツポーズに出たんだと思います」
神野は少し恥ずかしそうに、小さなガッツポーズの真意を解説してくれた。
このレースの最大の収穫はMGC獲得だが、もうひとつは腹痛が起こらなかったことだろう。過去4レースはいずれも腹痛に悩まされ、目標タイムをクリアーできなかった。天敵ともいえる腹痛が姿を現すことがなかったのは、神野の今後を考えると非常に意味のあるレースだった。
では、なぜ今回、腹痛が起きなかったのか。
一昨年の福岡国際マラソンの後、さまざまな検査を行なうも、疾患的な要素が見つからないなか、トレーナーの中野ジェームズ修一氏が、最後の原因として挙げたのが「メンタル」だった。結果を出そうとするあまり緊張し、レースで力みが出て、それが腹痛につながっているのではないか。その腹痛を意識し過ぎてしまうあまり、発症すると「またか」とメンタル的に落ちてしまう。その悪循環に陥っているという見方だ。
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