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【東海大・駅伝戦記】箱根に通じる
最終レースで部員同士が火花を散らす (7ページ目)

  • 佐藤 俊●文・写真 text & photo by Sato Shun

 西田は山しか見ていないという。

入学前から山を走ることをイメージし、そのための練習を積んできた。ただ、8月末の時点では春日との力の差がまだ大きく、再来年以降に山を走るチャンスを得られるかなと思っていた。ところが、この数カ月で一気にレベルを上げてきたようだ。

「8月は春日さんにぶち抜かれましたけど、今は春日さんとの距離がギュっと縮まってきました。箱根のトライアルでも単独走で平均タイムを上回る走りができました。それは夏合宿での走り込みがあったからで、今も自信になっています。山にも慣れてきて、前はキツイところで粘れていなかったんですけど、今はキツイところで粘れる力がついてきたのを実感しています」

 すでに2回ほど山を単独で走り、タイムも上々だったという。

 西田が春日に追いつき、追い越すような走りができるようになれば春日を平地に置くことも可能になる。箱根戦略の幅が広がり、両角速(はやし)監督にとっては嬉しい悩みになるだろう。

「今日は最後までしっかり粘れたのが収穫でした。さらにレベルアップして、箱根まで残り少ないですけど、16人のメンバー枠に入るだけじゃなく、自分が5区を走るんだ、春日さんからメンバーを奪うんだという意気込みで練習をしていきたいと思います」

 161cm、43kmの小さな体だが、気持ちは強い。

 箱根のメンバー登録まで、あとわずかだが、果たして山登りの5区候補として名前を連ねることができるのか。もし入れば、"秘密兵器"と呼べる存在になりそうだ。
 
 この時期のハーフは、主力選手にとっては現状を把握し、これからの調整に活かしていくためのものだ。一方で「なんとしても箱根を走りたい」という西川や西田ら当落線上にいる選手が意地を見せた。こうした選手の突き上げがチーム力を底上げし、チーム全体を強くしていく。また、箱根メンバーが決まった後も、彼らを支える選手たちが練習でいい走りを見せていくと士気が上がるものだ。

 今の東海大は箱根に向けて、そういうチームになりつつある。

(つづく)

◆全日本で神大に敗れた東海大が、箱根駅伝に向けて得た「苦い教訓」>>

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