東海大の苦い教訓。箱根駅伝は「ミスすれば負ける」サバイバル戦に (4ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun  photo by Kyodo News

 三上はしばらく神奈川大に後ろにつかれた状態で走っていた。

 1km2分55秒ペースで追い風もあったので、背中を押してもらうように余裕をもって走れていた。仕掛けたのは6.8km付近の給水地点だった。給水を取ると少し気が緩みがちになる。三上は走りながら、そこを引き離すポイントに考えていたのだ。

「うまく実行できたけど、自分のペースもそんなに速くなかったので、ついてこられてしまった。できれば離れてほしいなって思ったんですけど、もう1度、どこかで切り替えないと差を広げられないと思っていました」

 三上には単純に全日本に勝ちたい気持ちとともに、東海大に対する見方を変えていきたいという思いも強かった。スピード駅伝と言われる出雲では優勝することができたが、東海大は長い距離に対応できないと言われ、全日本、箱根の優勝は厳しいという見方をする者もいた。

 スピードを重視して鍛え、そこから距離を積み重ねていくやり方は、距離を踏んでいく従来の強化とは一線を画すが、東海大はあえて独自カラーを打ち出した。それを認めさせるためには勝つしかない。

「今シーズンの持ちタイムを見ていると、自分らは長い距離に対応できていないと言われるほどじゃないですし、むしろしっかりと調整さえできれば20kmも走れるメンバーが揃っている。だから勝って、見返したい気持ちが強かった」

 三上はスパートをかけて、徐々に後ろを引き離していった。

 最後の直線は1秒でもタイム差を広げるために歯を食いしばって走った。目の前に川端の姿が見えてきた。もう1度、力を振り絞って走り、襷を渡した。

 東海大はトップ通過。2位神奈川大との差は17秒。しかし、両角監督の表情はトップ通過にも硬いままだった。

「(神奈川大の)鈴木くんの走りを考えると30秒以上は欲しかったな」

 8区、川端千都(4年)が三上から襷を受け取り、淡々と走り始めた。

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