東海大の苦い教訓。箱根駅伝は「ミスすれば負ける」サバイバル戦に (5ページ目)

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun  photo by Kyodo News

 何としても勝ちたい――その思いはアンカーを走ることが決まった9月の紋別合宿から高いテンションのまま維持していた。6区を走り終えた國行からも電話をもらい、「絶対に優勝しような」と激励を受けた。川端は「任せておけ」と伝え、気持ちを高めた。

 レース序盤は苦しい展開だったが5区以降、上級生たちが盛り返し、國行の6区でトップに立つことができた。出雲で走ることができず、優勝しても気持ちが入らなかった川端にとっては、出雲の悔しさをぶつけ、自分の走りで優勝に貢献するチャンスだ。

 しかし、鈴木との17秒差は決してラクに走れるタイム差ではない。走る前、両角監督から電話があったという。

「追いつかれると思うが、背後に回って粘るしかないぞ」

 神奈川大の鈴木の実力は川端もよく理解している。そうなるだろうなと心の準備をして走っていた。

「追いつかれる展開は予想していました。そこからどこまで粘れるかっていうのが勝負だと思っていました。それが5kmぐらいかなって思っていたんですが......」

 鈴木は予想以上のハイペースで川端を追い、最初の1kmで4秒縮め、2.7km付近で追いついた。川端は「思ったよりも早く来たな」と思ったが、気持ちを切り替えて粘ってついていくことを考えた。しかし、3.6km地点で鈴木が前に出ると、そこからついていくことができなくなった。

 ここで決着がついてしまったのである。

「もっと粘っていいレースをしたかったんですが......。鈴木健吾選手とは力の差があったかなと思います」

 川端は痛む親指を我慢しながらゴールを目指した。思い描いていたガッツポーズはできなかった。

 東海大は5時間14分07秒で2位、トップの神奈川大とは1分18秒もの大差をつけられたのである。川端は目を真っ赤にしながらカメラの前に立ち、レースを振り返っていた。それを終えると、「すいませんでした」とポツリとつぶやいた。

 3、4年生の走りについて話が及ぶと、また涙がこぼれた。

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