【月報・青学陸上部】苦しんだ下田裕太は『君の名は。』に学んで走る (6ページ目)
苦しい時期、大ヒット映画『君の名は。』を3回観に行った。『とらドラ!』の時代から大好きだった、キャラクターデザインを担当する田中将賀と新海誠監督がコラボしたこの映画は、下田にとってはAKBの推しメンが総選挙で1位になったぐらいの喜びがあった。その映画から"最後まであきらめないこと"を学んだ。『この世界の片隅で』も観に行った。『Occultic;Nine -オカルティック・ナイン-』もお気に入りだ。アニメや好きな音楽で気分をリフレッシュし、箱根に向けて気持ちを整えた。
いよいよ箱根だ。
29日、区間エントリーが発表されたが、下田は控えだった。当日、メンバー変更による主要区間での投入は間違いない。どの区間を走るかはわからないが、下田はこれまで4区を希望してきた。
「今シーズンは、ずっと4区を走るつもりでトレーニングをしてきました。4区は距離が延びて、アップ&ダウンがきついコース。寒暖も激しいところだし、他の選手としのぎを削るところでもあるので自分に合っている。4区の区間賞をとって3連覇に貢献したいです」
決戦前夜、下田はまた緊張するだろう。箱根3連覇、出雲、全日本と合わせての3冠という偉業がかかっているのだ。緊張しないほうがおかしい。今年は2度、その緊張を経験し、自分の走りができなかった。3度目となる箱根で、その緊張感と向き合い、自分の走りにつなげていけるか。今シーズンはフォームの修正から始まり、練習も昨年以上に取り組んだ。すべきことはすべてやってきた。結果を出せずに苦しんだが、陸上の神様がいるとすれば、そろそろご褒美があってもいい。
「今年、苦しんだ壁を乗り越えたかどうかは、箱根でわかると思うんです。明確な結果が出ると思うんで。なんとか乗り越えたいです。そうして、あの苦しみはなんだったんだぁ?って言いたいですね」
試練はそれを乗り越えられる人にしか与えられない――。箱根では、こちらが拍子抜けするぐらい明るく、あっさりと壁を越えて大活躍するかもしれない。陸上エリートではないが、"努力の人"にはまだまだ伸びしろがたっぷりとあるからだ。
3連覇を達成した時、陽気な下田らしい勝利の言葉を聞くのが楽しみである。
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