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【陸上】大学生の桐生祥秀、レース棄権は「進化の証明」 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 3月に腰を痛めながらも、出場を間に合わせたという状態の山縣亮太(慶応大)が、力を抑えるような走りで10秒26の4位に。大瀬戸一馬(法政大)と九鬼巧(早稲田大)が10秒25で競り合って2位同着になった。

 そして、「去年スピードはついたが、力んだ走りになってしまっていたので、今年はリラックスした走りをするように心がけている」と話していた、200mが専門の高瀬慧(富士通)が序盤からスルスルと抜け出し優勝を飾った。記録も追い風0.7mの条件で日本歴代9位の自己ベスト10秒13を残した。

 だが、そんなハイレベルな記録にも関わらず、観客席からのどよめきは起こらなかった。

 その理由を同じ陸上界で活躍する、やり投げ界のベテラン村上幸史はこう語る。

「僕はずっと80mを超えることがすごい事だと思い、それを目指してやってきたんです。でも今はみんなのレベルが上がってきたので、観ている人の目も肥えていて、80mを超えただけでは観客席はどよめかないんです。それは選手にとってすごくプレッシャーになる事で、みんな『もっといかなければヤバイ』という気持ちになる。でもそれが一番大事なことなんですね」

 男子100mも昨年桐生が10秒01を出したことで、それと同じ状況になっているといえる。それだけ周囲が期待するレベルが高いのだ。

 大事をとって決勝を走らなかった桐生はこの後、5月11日のゴールデングランプリ国立の100mで9秒79を持つジャスティン・ガトリン(アメリカ)や9秒92のクリストフ・ルメートル(フランス)などと対決する。200mに出場する高瀬や飯塚翔太を含め、観客席をどよめかせてくれるような記録を期待したい。

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