【陸上】大学生の桐生祥秀、レース棄権は「進化の証明」 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi
  • 中村博之●写真 photo by Nakamura Hiroyuki

 一方で、今年から桐生を指導する東洋大学の土江寛裕コーチは「後半はかなりうまくスピードに乗ったが、前半の部分はまだ桐生本来のスタートになっていない」と指摘する。

 桐生自身も「スタートは元々得意ではないから、いろんな人からいろんな話を聞いて、自分に合うように当てはめようとしているところ」と言い、予選では「スタートが遅れても後半で追いつけるだろうという、マイナスな部分がでてしまった」と反省した。

 さらに桐生は後半の走りについても次のように振り返った。

「今回は出雲陸上の時よりスピードがワンランクあがったので、それに体がついて来なかったのかなと思います」

 確かに出雲陸上の走りでは、中盤からの加速部分で昨年より力を使っているように感じた。それが織田の予選では少し改善されていたが、大阪ガスの朝原宣治コーチはこう見ている。

「100mを走りきる歩数が去年より2歩多くなっていてピッチが速くなっています。(2月の)大阪室内のゆったりとした感じの走りからかなり変わって、中間の部分で脚を回している感じがしますね。まだピッチの速さに脚の動きがついていっていない感じで、動きのワンサイクルが終わりきらないうちに無理に動かしている感じがします。それで脚に負担がかかって攣(つ)ってしまったのでは......」と分析。

 今後の改善点としては、「脚の動きのサイクルが今のピッチに合うようになればストライドももう少し伸びてきて100mを走りきる歩数も減ってくる。そうなれば自然に記録も出てくるはず」と話した。

 決勝は桐生が不在だったが、ハイレベルなものとなった。

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