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日本のエース、鈴木孝幸が集大成で臨む東京パラ。5種目でメダル獲得を目標に掲げ、まずは初戦で銅メダル (2ページ目)

  • 荒木美晴●取材・文 text by Araki Miharu
  • 植原義晴●写真 photo by Uehara Yoshiharu

 鈴木は現在、練習と生活の拠点をイギリスのニューキャッスルに置く。2013年、水泳のため会社の語学留学制度を活用して留学したのが始まりで、当初は1年の予定だったが、スポーツに力を入れるノーザンブリア大学からオファーがあり、会社の了承を得て留学を延長した。

 現在は、同大学の大学院博士課程でスポーツ・マネジメントを研究しながら競技と両立を続けている。今はプールとジムとフィジオスペースが一緒になった「スポーツセントラル」というキャンパス内のスポーツ施設が鈴木の"ホーム"で、ロンドンパラリンピックでイギリス代表チームのコーチを務めたルイーズ・グラハムコーチに師事する。

 当初は異国での生活に苦労もしたが、渡英して8年が経ち、語学力だけではなく、物事を客観的にとらえる視点、そして自立心がより増すなど、人間力も磨かれたと話す。

 充実した環境のなか、この5年間は体幹を鍛えるトレーニングを取り入れ肉体改造に取り組んできた。実は前回のリオ大会は、「メダルを逃せば引退も」と不退転の覚悟で臨んでいた鈴木。だが大会後に自分のレース動画を分析すると、体幹に強化の余地があり、まだ自分にも伸びしろがあると気づいた。

 加えて、この時点でイギリスに残る期間が2年ほど残っていたため、「そこまではとりあえず水泳をやらなければならないという状況だった」こともあり、この2年間は見つかった改善点を修正し、強化していくと決めた。「それで結果が出なければ東京パラリンピックには出場せず、アスリートのキャリアは終わらせようと思っていた」と、鈴木は当時の覚悟を明かす。

「体幹強化の余地」については、鈴木は先天性の四肢欠損で左右差があり、かつ脚は大腿部から欠損しているため脚の重みを使った強化をあまり重視してこなかったという背景もある。だが、体幹トレーニングの成果は明らかで、姿勢が水面に対してよりフラットになって抵抗が減り、水もしっかり掴めるようになった。

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