記録は世界3位。五輪出場を目指す
義足のジャンパーの意志はブレない (2ページ目)
ブレない、オリンピックへの思い
"マルクス・レーム"の名が国際的に知られるようになったきっかけは、彼自身の"五輪出場への意志"である。
2014年の『ドイツ陸上競技選手権』で健常者選手に混ざって8m24で優勝。この時、右足膝下に装着した義足で踏み切るレームに対し、敗れた選手の間から「カーボン繊維製義足による跳躍は不公平では」と抗議が起こり、翌年の同大会で出したレームの記録(8m11)は、認められなかった。
それを尻目に、2015年の世界パラ陸上競技選手権(カタール)で8m40をマークした頃から、レームは五輪への出場希望を公に口にするようになった。
なぜ、彼は五輪に出場したいのか。その理由を、レームはこう説明する。
「オリンピックとパラリンピックは、もう少し距離を縮めるべきだと考えている。自分自身、パラリンピアンとしての誇りもあるけれど、オリンピアンに対してパラリンピアンがどれだけ勝負できるかを証明したい」
今年7月のジャパンパラ陸上における競技直後の言葉である。その意志は、ベルリンでの世界記録更新後も、ブレることはなかった。
「オリンピックに出場したい。メダルが獲れるかは重要じゃない。それよりもオリンピックとパラリンピックの架け橋になりたい。僕がオリンピックに出ることで、ハンディキャップがあっても何かを成し遂げられることを伝えたい。数年前までは、『義足では速く走ったり、高く跳ぶことはできない。そもそもスポーツにならない』という声もあった。それでも、今日のような記録を樹立することで、世界中の人々に不可能はな無いと証明することができる。結果として、より多くの人がパラリンピックに興味を持ってくれる。それが今のモチベーションだ」
困難を極める"公平性"の証明
これまでも、パラアスリートがオリンピックに出場したことはある。代表的な例で言えば、2012年のロンドン大会で陸上競技男子400mに出場したオスカー・ピストリウス(南アフリカ)だろう。
両足膝下が義足の彼は、2008年に北京オリンピック出場を目指していたが、IAAFにより棄却された。その理由は「カーボン製義足の推進力が競技規定に抵触する」というものだった。これを受けて、ピストリウス氏はスポーツ仲裁裁判所(CAS)を通じてIAAFに提訴。専門家らによる検証の結果は「義足は競技において有利性はない」。
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