記録は世界3位。五輪出場を目指す
義足のジャンパーの意志はブレない (4ページ目)
レーム自身が五輪への出場を希望する限り、議論や報道が止むことはないだろう。
「僕がパラ陸上の走り幅跳びを始めた時の世界記録は、7m以下だった。それを考えると、物凄い進歩だ。今のところ自分の限界は見えないので、極限まで挑戦したい。健常者のアスリートに嫉妬されるくらい遠くに跳びたいね」
欧州選手権競技終了後、ミックスゾーンでレームはそう話した。
レームの言動からは、五輪出場の可否、義足の有利不利といった議論を飛び越えて、己の限界に挑み、人間の可能性を追求したいという、いちアスリートとしての抑えがたい挑戦心が垣間見える。
現在、走り幅跳びの世界歴代10傑のラインは8m68。東京オリンピック・パラリンピックまでの約2年間で、レームがその領域に到達する可能性は小さくない。
皮肉なことではあるが、彼が「極限まで挑戦」し続けるほど、IAAFは態度を硬化させ、五輪出場はかえって遠のいていくようにも思える。一方で、レームが快進撃を続けるほど、自身の「ハンディキャップがあっても何かを成し遂げられることを伝えたい」という思いは、広く伝播していくのかもしれない。
2008年からレームのコーチを務める、元オリンピアンのシュテフィ・ネリウス氏によると、「知り合った当初、レームは5m60しか跳べなかった」という。
"義足"というテクノロジーが身体にもたらす影響や、記録の上昇から見て取れる、義足を体の一部として扱う身体能力の進歩。さまざまな論点を内包するマルクス・レームの五輪出場へ向けた道程は、当面、決着を見る気配はなさそうだ。
通訳協力:中津卓也
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