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記録は世界3位。五輪出場を目指す
義足のジャンパーの意志はブレない (3ページ目)

  • 吉田直人●取材・文 text by Yoshida Naoto
  • 越智貴雄●写真 photo by Ochi Takao

 CASはIAAFの判断を覆し、「規定の参加標準記録を突破すればオリンピックへの出場は可能」という審判を下した。北京大会に向けては標準記録を突破できず、出場は見送られたが、2011年にこれを突破し、ロンドン大会への出場に漕ぎつけている(結果は準決勝進出)。

 レームも近似した状況に置かれている。「義足による踏切はアンフェアではないか」という意見を受けてルールの制定に動いたIAAFは、2016年のリオ・オリンピック開催を前に、オリンピック参加の条件として「義足に有利性がないことを選手自身が証明すること」という条文を加えた。

 レームは専門家による検証を試みるが、提示できた結論は「義足の装着で助走時は不利だが、跳躍時は有利」。IAAFはこれを「証明不十分」とし、レームがオリンピック出場の資格を得ることは未だできていない。

 置かれた状況は似ていても、ピストリウス氏のときよりも複雑な点は、走り幅跳びという競技が"助走"と"踏み切り"という段階的な動作で成立していることだ。双方の動作が密接に関わって、体が駆動し、記録となって表れる走り幅跳びでは、義足に有利性がないことを証明しようとしても、"あちらを立てればこちらが立たず"になる可能性が多いにある。従って、レームのオリンピック出場に向けては、非常に大きな壁が存在すると言えるだろう。

極限の先にあるのはオリンピックか、それとも......

 とはいえ、上述の議論が起こった当時の状況は、IAAFとレーム陣営が相対しているという構図ではなく、ワーキンググループを設置し、さらなる検証の余地を探っていくというものであった。しかしながら、2017年の世界陸上競技選手権(ロンドン)に向けて、レームは再度IAAFの説得を試みたものの、結果として出場には至っていない。

 8m48をマークした8月のパラ陸上欧州選手権の直前は、7月に日本で世界記録を樹立した影響もあり、ドイツ国内のスポーツ報道でも新たな記録誕生の機運が高まっていたが、同時にレームの五輪出場に向けた奮闘についてもあらためて紹介されていた。

 そのなかには、2020年に向けてIAAFと平行線が続いている現状を受けて「(IAAFは)勇気がない(≒臆病だ)」というけん制ともとれるレーム自身の発言や、ピストリウス氏が行なったようなCASへの提訴という選択肢について触れるメディアもあった。

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