頂上決戦で4車身も差がついたのはなぜか ガールズケイリン佐藤水菜の圧勝にライバルは「動くのが怖かった」 (3ページ目)

  • 小堀隆司●取材・文 text by Kohori Takashi

 トップに立ち、最終4コーナーを回るとき、佐藤は後ろを振り返るのではなく、正面の大型ビジョンで自身のポジションを確認している。勝負所での冷静さも際立っていた。

「あれは、後ろを確認して体勢を崩すよりも、正面のビジョンを見たほうが早かったので。そこは冷静に前を見て、自分の視野では見きれないところを確認しました。それで単独の先頭ということはわかったんですけど、何があるかわからないのでゴールまではしっかり踏み切ろうと。優勝は純粋に、ただただ嬉しかったですね」

 1着佐藤、2着には児玉を制した梅川が入った。

 3着に敗れた児玉のコメントは潔かった。

「脚が回っていたし、自分のなかではけっこうよかったんですけどね。結局、梅川さんにも抜かれているから、ナショナルは強い! でも、今年は骨折からスタートして、しかも粉砕骨折で、そこからの復活でした。来年はもっと強くなって戻ってきます」

4車身の差をつけたゴール。圧巻のレースだった photo by Takahashi Manabu4車身の差をつけたゴール。圧巻のレースだった photo by Takahashi Manabuこの記事に関連する写真を見る

【次なる目標はパリ五輪】

 このレースで1330万円(副賞込)を手にした佐藤は、同時に賞金女王のタイトルも獲得。名実ともに、日本のトップに立った。

 1年を振り返る表情には、充実感が漂っていた。

「自分が負けた世界選手権やガールズドリームレース(優勝は児玉)は、周りから『勝てる』と言われたり、勝たなきゃいけないっていうふうに背負い込んで、気負ってしまって勝てなかった。そういう部分を全部取っ払って、チャレンジャーの気持ちで臨めたのが今年の後半でした。今日のレースもそうですけど、やっぱり強い気持ちで攻めるのが大事なんだって再認識できましたね」

 女王が次に見据えるのは、パリオリンピック。世界の強豪を相手に、攻めるレースを目論む。

「来年は本当に勝負の年。ガールズケイリンを盛り上げるのにも五輪はすごくいい機会ですし、4年に1度の大会でしっかり結果が残せたら、それこそ最強の女になれると思う。まずは2月に始まる前哨戦でいいスタートダッシュを決めて、五輪ではケイリンで金メダルを取りたい。胸を張って、ガールズケイリンに帰ってきたいです」

 ナショナルのプライドと、ガールズの想いを背負って、佐藤は来るべき五輪シーズンを戦う。苦しくなったとき、女王の肩書きが、力強く背中を押すことだろう。

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