頂上決戦で4車身も差がついたのはなぜか ガールズケイリン佐藤水菜の圧勝にライバルは「動くのが怖かった」 (2ページ目)

  • 小堀隆司●取材・文 text by Kohori Takashi

【佐藤に対する強い警戒心】

 佐藤は現在、ナショナルチームのエースとして、女子ケイリンでめざましい活躍を見せている。21年、22年と世界選手権で2度の銀メダルに輝く。今年もアジア選手権で金メダルを獲得し、来年のパリオリンピックでも有力なメダル候補の一人だ。

 対する児玉は国内のガールズケイリン一筋。8年連続でグランプリの舞台に立ち、18年、19年、20年と3年連続で優勝するなど、実力は頭一つ抜けている。

 ナショナルのプライドか、ガールズの意地か、二人の対決はそんな意味でも注目を集めたが、勝負所である残り1周半の鐘が鳴っても、児玉は動けなかった。

「後ろに(坂口)楓華と梅川(風子)さんがいたので、どっちかが(佐藤を)抑えに行くかなと思って、それに合わせて出ていこうかと思ったけど、動かなかったですね。(私が前に出る?)じゃあサトミナが(私の)後ろになるということでしょ。今日のサトミナは(前に)入れる感じがしなかったんですよね。いつでも(他の選手に)合わせる気が満々の雰囲気だったから」

 佐藤はあえて、先行する二人と自らの間にスペースを空けていた。後ろから誰が来てもすぐに対応できるように、セーフティーゾーンを作っていたのだという。児玉はその意図を感じ取っていたからこそ、最後の競り合いに賭けたのだ。

 やはり、後方からレースを組み立てた梅川は、こう言ってナショナルのチームメイトを称えた。

「自分より前にいたらコントロールされるんですよ。だから、私たちが後ろからどうサトミナを動かすかというのが大事だったのに、それができなかった。もっと追い上げるなり、仕掛ける素振りをして揺さぶるべきでしたね。私はまだ前のこの辺り(近い位置)しか見えていないんですけど、サトミナは視野が広くて、レース全体を把握している。そういうところも上手でした」

 前を行く選手に離されても、射程圏内であれば追いつける自信がある。そのうえで後方の選手をけん制し、抜かれないギリギリのタイミングで自ら仕掛ける。レースをつくる巧さは、世界の強豪たちと戦うなかで身につけた佐藤の武器だろう。

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