ガールズケイリン史上最速で500勝を達成した児玉碧衣 驚異の勝率83.8%の秘訣は「リミッターを外せる」力 (3ページ目)

  • 加藤康博●文 text by Kato Yasuhiro
  • 池田清太郎●写真 photo by Ikeda Seitaro

 また、体のことで言えば、男子と女子の違いは一本を全力で追い込もうとした時、女子はどうしても本能的に体を守ってしまい、全力を出しきれないことが多いのですが、私は集中して自分の全ての力を出し切れる。本当に倒れるまでもがくことができるんです。リミッターを外せるからこそ、レースでも力を発揮しきれているのだと思います。これはバレーボールで鍛えられたところですね」

 考えることが嫌いと言っていたが、実際には自分の体と向き合い、考え尽くしてトレーニングをしたからこそ今の強さがあるということだろう。

「それと筋肉で言えば、私は腹横筋がとても強いようです。ある研究でメディカルチェックを受けた時に指摘されましたが、ただ太ももの筋肉だけを使うのではなく、腹横筋を使い、骨から脚を動かしたほうがエネルギーを使わないと聞きました。実際、私はエコーで腹横筋を測定した時、力を入れると通常の3倍くらいまで膨らみました。普通は2倍までいけばいいらしいので、この点も大きな武器になっているのだと思います」

 脚だけでなく、腹部まで使ってペダリングする。これは意識して身についたものではない。子どもの頃の遊びや、バレーボールでの取り組みが結果的に最高の形で競輪につながっていると児玉は考えている。

「競輪選手になってから、男子選手から勧められたトレーニングがありましたが、それは私が小学校の時からやっていたものだったんです。それくらい早い時期から厳しい練習をしていました。バレーボールのトレーニングが今に生きていることは間違いないですね」

ガールズケイリン史上最速で500勝を達成し、選手たちに祝福される児玉(中央)ガールズケイリン史上最速で500勝を達成し、選手たちに祝福される児玉(中央)この記事に関連する写真を見る

【アクシデントも糧にし、さらなる成長を】

 2022年12月のガールズグランプリではレース終盤に他の選手と接触し、落車するアクシデントがあった。ここで左鎖骨粉砕骨折という大ケガを負ってしまう。患部にワイヤーを入れ、1月末には復帰したものの、その影響は大きく、完治するまで本来のパフォーマンスを発揮できずに苦しんだ。だがそのことも今は前向きに捉えている。

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