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「うちらって、ちょっとスカしてなかった?」鈴木夕湖の言葉にハッとした吉田知那美 ロコ・ソラーレは大ピンチに雑草チームの底力を取り戻した (2ページ目)

  • 竹田聡一郎●取材・構成 text by Takeda Soichiro

 漫画みたいにクールでカッコいいチーム、飄々と勝っていく強いチームになれるもんならなりたかったです。これは私だけかもしれませんが、特に平昌五輪以降、応援してくれる人が増えると同時に「カーリングなんてあんなのスポーツじゃない」という意見を、選手のSNSに直接届ける方々もいて、そういう言葉の矢面に立つことも少なからずありました。

 今でこそ、そんな方々のことを4年に一度定期的に訪れてくれる渡り鳥的な存在として受け入れてますが(笑)、当時はとても悔しいし、悲しかったです。だから、無意識化で他競技のトップアスリートのように振る舞っていて、彼らのようにカッコよく強くなりたかったのかもしれません。

 でもロコは、本当はダサくて弱くてガムシャラで、自分たちの弱いところを認めてさらけ出して、そうすることで少しずつ強くなってきた雑草みたいなチームです。クールにカッコよく勝つなんてやったことないですし、できるわけがないんです。

 弱さを隠して自分たちを追い込み潰れていくなら、弱さを出して勝ったほうがいい。そう開き直ってプレーした3戦目以降は、雑草チームとしていつも這いつくばってきたロコ・ソラーレの底力が帰ってきた感覚を鮮明に覚えています。

 その後は、大泣きしてしまうなどさまざまな感情が入り混じったので、はっきりと記憶していないのですが、そういった経緯があって、試合後のインタビューで「私たちはトップアスリートではなく、ロコ・ソラーレであればいい」という発言をしたのだと思います。

 そして、あの試合であそこまで崖っぷちに追い込まれたことで、北京五輪に向けた最終予選、さらに北京五輪でも、最後まで"ロコ・ソラーレらしさ"を忘れずに戦うことができました。フォルティウスのみなさんには感謝しかありません。最近は対戦できてないので来季、またいい試合ができるのを楽しみにしています。

 実はあの大会中、さっちゃん(藤澤五月)が「わああああ」と子どものように大声で泣き喚いた話があるのですが、それはさっちゃんの言葉とともに、またの機会にお話しさせてください。

吉田知那美(よしだ・ちなみ)
1991年7月26日生まれ。北海道北見市出身。幼少の頃からカーリングをはじめ、常呂中学校時代に日本選手権で3位になるなどして脚光を浴びる。2011年、北海道銀行フォルティウス(当時)入り。2014年ソチ五輪に出場し、5位入賞に貢献。その後、2014年6月にロコ ・ソラーレに加入。2016年世界選手権で準優勝という快挙を遂げると、2018年平昌五輪で銅メダル、2022年北京五輪で銀メダルを獲得した。2022年夏に結婚。趣味は料理で特技は食べっぷりと飲みっぷり。

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