クライマー安楽宙斗16歳が今夏ついに世界へ...パリ五輪まで残り1年「追い込まれた」楢﨑智亜はW杯で巻き返せるか

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Kyodo News

【楢﨑智亜は復活できるか】

 たとえば、決勝のボルダー第2課題。この課題を完登したのは世界屈指のフィジカル能力を持つ緒方良行だけ。緒方以外はゾーン1も獲得できなかったなか、井上祐二(6位)はゾーン1にもっとも近づくクライミングを見せた。

 このシーンについては日本山岳スポーツクライミング協会の無料配信動画をチェックしてもらいたいが、井上は短い競技時間のなかでフィジカルでの真っ向勝負以外の方法を探し、さまざまな動きを試み、同じ動きでも手順を変えながら打開策を模索した。この姿勢こそが、現時点の安楽がフィジカル強度の高い課題を攻略するために求められるところだろう。

 世界選手権に出場できる日本代表枠は「男女各5」。男子はボルダージャパンカップとリードジャパンカップの結果によって出場が決まっている楢﨑明智(9位)と、今大会で上位2名となった安楽、百合草で3枠が埋まった。

 残り2枠は、今シーズンのW杯でのボルダーとリードの成績によって決まる。そのためには両種目でW杯に出場する必要があるが、この資格を持つのは緒方、今年のリードジャパンカップ優勝者の小俣史温(しおん/12位)、そして楢﨑智亜の3人のみ。

 楢﨑智亜は「この2週間くらいで体調を崩してコンディションを落としてしまった」という影響もあって、今大会は予選敗退の10位。この結果に「追い込まれましたね」と語ったその目はすでに、4月21日〜23日の東京・八王子で開幕するワールドカップシーズンに向けられていた。

 否応なく来夏のパリオリンピックが色濃く反映される今季のクライミングシーズン。最初のハードルを制したのは安楽だったが、ドラマはまだ始まったばかりだ──。

プロフィール

  • 津金壱郎

    津金壱郎 (つがね・いちろう)

    フリーランスライター・エディター。大阪万博年生まれ。東京都出身。出版社での雑誌やMOOKなどの編集者を経て、2000年からフリーランスに。スポーツクライミングの取材歴は2013年から。近年はMリーグにハマっている。

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