クライマー安楽宙斗16歳が今夏ついに世界へ...パリ五輪まで残り1年「追い込まれた」楢﨑智亜はW杯で巻き返せるか (2ページ目)

  • 津金壱郎●取材・文 text by Tsugane Ichiro
  • photo by Kyodo News

【安楽の課題はフィジカル】

 パリ五輪で実施される「ボルダー&リード」は、成績をポイント換算して順位を決める。ボルダーなら1課題につき1度目のアテンプト(※)で完登すれば25ポイント。4課題すべてを一撃すれば100ポイントを獲得できる。

※アテンプト=スタートを切ること。

 完登できなくても、課題途中に設定されたゾーンまで登れれば、ゾーン1で5ポイント、ゾーン2で10ポイントを手にできる。ただしアテンプト数がかさめば、その分だけ減点されることになる。

 リードは完登すれば100ポイント。途中でフォールした場合は最終ホールドから起算して、10手目までなら各4点、11手目〜20手目までが各3点、21手目〜30手目までが各2点、31〜40手目までが各1点を手にできる。

 たとえば、最終ホールド1手前なら96ポイント、2手前なら92ポイントということ。このほか、次のホールドを保持できなくても、触れば0.1ポイントを獲得できる。

「スピード×ボルダー×リード」の順位をそのまま掛け合わせた数値がポイントになった東京五輪に比べると、計算方法は複雑に感じるかもしれない。だが、重要なのは完登できたかどうか。配点が細かく設定されたことによって、完登に近づいたパフォーマンスが順位に反映されるようになっている。

 安楽は今大会の上位2名に与えられる世界選手権のボルダーとリードへの出場権を手にしたが、今夏の世界選手権で躍動するためには、まだ課題も残されている。そのひとつが、パワフルなムーブを求められるフィジカル強度の高い課題への対応力だ。

 今年2月のボルダージャパンカップでは予選1位通過ながらも、課題のフィジカル強度が高まった準決勝で敗退。今大会も「パワーが必要な課題がたくさん出るのかなと思っていたけど、僕の得意な動き系だったのがよかった」と口にするなど、本人も筋力面でトップ選手に劣っていることは自覚している。

 ただし、一般的に男性が筋力的に本格的に発達期を迎えるのは骨格が安定する18歳くらいからで、まだ16歳の安楽が高いフィジカル強度に適応できないのも当然のこと。そのため現状では、それ以外のところをブラッシュアップすることがフィジカル強度の高い課題への糸口になってくるだろう。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る