ガールズケイリン界に飛び込む注目新人3選手 運動部経験ゼロながらも連続A評価のサラブレッドも (2ページ目)

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124回生でナンバー1の総合力、竹野百香124回生でナンバー1の総合力、竹野百香

在所成績1位の逸材
竹野百香(たけの・ももか)
2002年8月22日生まれ、三重県出身

「先行1本で頑張ります」

 卒業記念レースの決勝戦を控えたインタビューで高らかにそう宣言した竹野百香。「先行」とは文字どおりレースで先頭を走る戦法で、レースの主導権を握ることができるうえに、先頭を狙う後続の選手を防ぐこともできる。しかし風を受けるために消耗が激しく、後続からのけん制をうまくかわす必要も出てくるため、スタミナ切れのリスクがつきまとう。

 彼女がこの戦法にこだわるのには理由がある。

 高校から自転車競技をやり始めた竹野。入学当時はバスケットボールをやろうと考えていたが、「どうしてもその部活動の環境が合わなくて、兄の薦めで自転車部に入りました」と予期せぬ転向だった。しかし竹野はすぐに自転車競技にのめり込む。

「高校時代は日曜日が休みだったんですが、その日は自転車を分解して洗車したり、乗りに行ったりしていました。洗車は1週間に1回は必ずやっていたほど、自転車が大好きでした」

 また、生来の負けず嫌いの性格もあり、少しでも速くなりたいと地道に努力を重ねた。着実に成長を遂げた竹野は、高校3年時に全日本ジュニアスプリントで2位、500mタイムトライアルで3位の好成績を残した。それでもこの結果に満足できず、卒業後も自転車を続け、いつかは頂点に立ちたいという強い願望が湧いてきた。

 そうして日本競輪選手養成所の門を叩くが、ここで大きな試練が立ちはだかる。

「最初の頃は6着や7着ばかりで、辞めたくて辞めたくて......」

 自分の走りがまったく通用しない。各種大会で優秀な成績を残してきた強者達が集う養成所のなかで、勝てない現実に打ちのめされる日々が続いた。

 それでも竹野は逃げ出さなかった。それは「歴代の強い選手たちはこの養成所でみんな先行してきた」という先生方の言葉があったからだ。自分が力をつけて頂点に立つためには、とにかく「先行」にこだわらなくてはいけない。逆にそれこそが強くなる近道だと竹野は覚悟を決めた。

 そこから「先行一本」を自分に課した。この強気の姿勢が功を奏し、出走40回中、実際に「先行」できたのが27回で、そのうち10回で1着を獲得。「先行」しなかったレースでの1着を含めると計15回1着をとっており、最終的に在所成績1位で卒業することができた。

 卒業時の竹野の資料には、得意な戦法の欄に「自在」と自ら記している。「自在」とは、「先行」「まくり」「追い込み」「マーク」などの戦法を状況に合わせて駆使するスタイルのことだ。

 歴代の名選手たちにならい、敢えて「先行」を選択して実力をつけた竹野。ここから先は手ごたえを掴んだ「先行」を武器にしつつも、臨機応変なスタイルで勝利を目指すはずだ。困難な状況のなかで「先行一本」という選択をした、その強い覚悟を今後も持ち続ければ、彼女の目標であるガールズグランプリ優勝も現実のものになるかもしれない。

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